一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する
「どうしよう、凪」
「どうしようって、予定ないなら会う一択でしょ! また私が返事してあげようか?」
「うん……お願いします」
情けない声で言い、凪にスマホを手渡す。千石先生には失礼かもしれないけれど、自分でやろうとしたらきっと緊張で手が震えてうまく文字が打てないだろう。
凪は悩んだ様子など微塵も見せず淡々とメッセージを打つと、一分も経たないうちに私の手にスマホを返した。
「ありがとう。面倒なこと頼んじゃってごめん――」
凪にお礼を言いながら画面を確認し、絶句する。
【その日で大丈夫です。よろしくお願いします】
そんな短いメッセージの後に、追加の文章があって。
【休みの日に千石先生と会うなんてドキドキします。楽しみにしてますね(ハートの絵文字)】
凪……! なんでそういう余計なひと言を!
あまりのダメージに、スマホを握りしめたままゴツッとテーブルに額を打ち付ける。
こんなの、絶対に私のキャラじゃない……。
「凪……これ、送信、取り消しってどうやるの」
「取り消したってもう遅いよ。ほら、既読ついてるし」
「うそぉ……もう、いっそ私が消えたい……」
テーブルに突っ伏して投げやりになっていると、またスマホが鳴る。千石先生、絶対に引いたよね。
【どうした。熱でもあるんじゃないか?】
とか、そういう返事だったら恥ずかしすぎる……。