一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する
「実は今日、待ち合わせの時からずっと、姉とその彼氏に私たちを尾行してもらっていたんです」
「尾行?」
「はい……」
想定外の答えに目を丸くするしかし、思ってみれば、さっき誰かからの視線を感じたような気がした。あれは気のせいなんかじゃなく、杏のお姉さんたちだったのか。
納得したところで、杏がお姉さんにそんなことを頼んだ理由に見当がつき、俺の方こそ謝りたくなった。
……おそらく、俺は警戒されていたのだ。
「そうだったのか。もしかして怖がらせてたか? だとしたら心から謝る」
「いえ、違うんです……! 千石先生のことは信用してますし、怖いだなんて思いません。ただ、自分がちゃんとしたデートができるかどうか自信がなくて……なにか間違った行動を取っていたら姉に指摘してもらおうと思って、見守りを頼んでいたんです」
杏に信用されていたと知り、少し肝が冷えた。
とりあえず手を繋ぐ以上のことはしていないとはいえ、一度キスしたい衝動に負けそうになった瞬間があったから。
……あの時は耐えて正解だったようだ。