一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する
「僕も杏も、院長と愛花先生のような夫婦関係が理想だと思っています。おふたりのようにいつまでも仲睦まじい夫婦でいられるよう、努力します」
「やだ、恥ずかしい。いつまでも仲睦まじいだなんて……」
「照れるなよ愛花。本当のことだろ」
父が母の肩を抱くと、母が年甲斐もなく真っ赤になった。
こんな時の母は、脳外で恐れられているのが嘘のように恋する乙女に戻ってしまう。そしてそんな母を見た父は、さらに蕩けた眼差しになる。
職場でなにをやっているんだろう私の両親は……。
呆れて何も言えずにいると、千石先生がスッと立ち上がる。
「それでは、午後の外来の準備がありますから僕たちはこれで」
「ああ。なにか相談があればいつでも言ってくれ。俺は杏のためにバージンロードを歩く練習でもしておくかな」
「別にしなくていいよそんなの……」
父の浮かれた発言が気に障って、つい冷たい態度になってしまった。
あからさまに傷ついた顔をする父を目の端で捉えつつ、千石先生の後を追って院長室を出る。聞きたいことがありすぎて、思わず前を歩く彼の白衣を掴んで引き留めた。