一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する
柊二さんはそんな私をからかうでもなく静かにジッと見つめ、私の顎に軽く手を添える。
彼の綺麗な瞳に吸い込まれそう――そう思ったのは錯覚ではなくて、長い指先にくいっと顔を引き上げられると同時に彼の顔が近づき、あっと思った時にはもう、唇同士が触れていた。一気に体温が上がって、胸が苦しくなる。
花火の日、額に彼の唇が触れた時もドキドキしたけれど、今の心拍数はその比ではない。
これも夫婦になるための訓練……なのだろうか。
キスの理由について私なりに思いを馳せていると、柊二さんの唇がそっと離れていく。
「……嫌じゃ、なかったか?」
なんとなくキスの余韻を残した吐息交じりの声で、柊二さんがささやく。私の心を覗くように細められた目に嘘はつけなくて、ただこくんと頷いた。
ふ、と優しく笑う彼の息が頬にかかる。
「だったらもう少し、練習してみよう」
柊二さんは両手を私の頬に添えると、私の髪をかき分けるようにして耳の脇を撫で、そのまま後頭部に回した手で頭をがっしりと固定する。
獲物を逃すまいとするような仕草、そして私を真っすぐ射貫く視線にいっそいう胸を熱くした瞬間、今度は少し強めの力で唇を押しつけられた。
私は目を閉じて、体の両脇に下ろしていた手をおずおず彼の背中に回した。