一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する

 乱れた呼吸で胸を上下させる私を軽々と抱き上げた彼は、そのままベッドの方へ大股で足を進めた。シーツの上にそっと下ろされ、覆いかぶさってくる彼のキスを再び受け止める。

 さっき彼が言っていた『同じベッドで寝る』って……やっぱり、ただ寝るだけじゃない?

 ぼんやりする思考の中で思い、ふと不安になった。

 キスすら初めてだった私をこんな風に骨抜きにしてしまうくらいだから、柊二さんにはきっとたくさん経験があるのだろう。

 でも、私は……。この年で本当に一度も経験がないのだ。

 私は医者だし、もちろん男女の体のつくりがどうなっていて、抱き合う時にはこことあそこをこうして……という知識だけはある。

 だけど自分の身に置き換えたら、そんなとんでもなく恥ずかしいことできる気がしない。そもそも、自分の体を他の人に見せること自体、すごくハードルの高い行為だ。

 経験豊富そうな柊二さんにはきっと比べる対象がいるだろうから、もしも勇気を振り絞って彼にすべてを晒したうえで、がっかりされて結婚取りやめ、なんてことになったら……。

 ひとりであれこれ考えているうちに不安が膨らんで、甘いはずだったキスが胸を締め付けるものになる。

 そのうち柊二さんの手が私の服を捲ろうとしているのに気づいて、私はとっさに彼の手を掴んで制した。

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