スカイブルーPeace
それから凜華が口を開いたのはそれから十分ほどたった時だった
「聞いて、くれる?」
「あぁもちろんだ。話してくれるか?」
「うん。話す…………
夏休みが明けてから私がよく喜多村と帰るようになっていたのはまーくんも知ってるだろ?」
「あぁ」
理事長室の窓から外を見ると下校門に向かって歩いていく生徒たちが見える。
だから最近凜華が喜多村と帰るようになったことは知っている。一緒に帰ってる時の凜華の顔はすごくうれしそうで安心している顔だった。
「今日も一緒に喜多村と帰る予定だったんだ。だから咲良に帰らないか誘われたけど断った。
でも咲良とバイバイしてすぐに喜多村が私の席に来て今日一緒に帰れなくなったから先に帰ってくれと言われた。
まぁ誰にだっていきなり予定が入ったりして帰れなくなることはあるだろうと思ってうなずいた。
そのあと帰ろうと思ったら木下先生が呼び出されたからこれを職員室の先生に配ってくれないかって頼まれて別に急ぎのようはなかったから手伝ったんだ。それが思いのほか時間がかかって終わったのはついさっき。」

ここまで聞いても別に凜華が傷つくような内容は全然ない。つまり凜華にとってのつらい出来事はこの後からここに来るまでの間にあるってことか…………

「そのあと時間的にまだ喜多村がいてもし帰るところだったら一緒に帰ろうと思って、教室を……見に行ったんだ……
そしたら教室で…………凜華を落とせたか?ってクラスの人と喜多村が話してるのを聞いて…………」

その後聞いた内容はすごく切ないものだった。
凜華が喜多村のことを好きになったことは何となくわかっていた。
喜多村も凜華のことが好きだと俺は思っていたけど、違ったのか?喜多村は凜華のことを助けたのは落とすためとかそんな理由ではない気がする。ただ落とすためだけに家の方にきいて一緒に住ませてもらったりもなかなかしないだろうし、凜華が倒れたところを助けたのも偶然だ。それにたまに見かける凜華と一緒に話している喜多村の瞳は愛おしいものを見るような瞳ですごく優しかった。でもその”ゲーム”が本当なら凜華を使って遊んでいたということだ。
凜華は強いようで弱く、小学校の時に真希がいなくなってから私は誰にも愛されてない、そういって泣いていたことがある。
凜華はその時からずっと愛を求めていた。そしてようやく見つけた愛をくれる人が凜華を使って”ゲーム”をしていたと知ったら、また前のように私は愛されていない、愛されない。そう思うのもわかる。
喜多村、何やってんだよ…………
俺はあの家で凜華が何をされていたかも何も知らないから今の凜華の心の傷がどれだけ深いものかなんて予想しかできない。
俺はまた何もしないで横で凜華の苦しむ姿を見ることしかできないのか…………?
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