君の好きな曲ばかり
仕事が終わり、自分の車に乗り込む。

ランダムで流す音楽。

好きな音楽が流れなくて、何曲もスキップしていた。

そうしてるうちに、君の好きなアーティストの音楽が流れてきて、飛ばせなくて、手が止まった。

そういえばこの人の曲、好きって言ってたな。

なんで聞いてしまうんだろう。

君が好きだから?

私が君を好きだから?

なぜ涙が出てくるんだろう。

終わった恋心は、もうここに存在してはいけない。

君はもうお空の上にいるから。

なんできちゃったのかな、お迎えが。

私だけがわかる魅力のある人でいて欲しかった。

取られたくなかった。

なんで好きになっちゃったのかな、私。

私の忘れられない曲にしないでよ。

私の好きな曲は流れないのに、君の好きな曲が続く。

まるで君が隣で流してるかのように。

「そこにいるの?」

聞こえない声は、ここにいるよと言って欲しいだけの空耳で、いるはずの無い声は聞こえたふり。

私もそっちに行きたいよ。

迎えに来てよ。

頑張るって決めたのにね、ごめんね、勇気付けてくれたんだよね。

だから君の好きな曲ばかり流れてくるんだね。

「君を好きでいてよかった」

私はシフトレバーをドライブに入れて、家に帰り始めた。

元気でたよ。お空でまた出会えたらいいね。

まっててね。

家に帰るとアパートのゴミ捨て場の前で、まだ小さい三毛猫が1匹捨てられていた。

「君なの?」

私は三毛猫の子猫を持ち上げた。

とても軽くて、持ち上げられた子猫は、ニャーニャーと鳴いている。

「男の子だね」

私は家に持ちかえることにした。

君だと信じて。

「今日からよろしくね、キョウくん」

また君に出逢えたよ。
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