あの放課後、先生と初恋。
「…皆木はこれから部活か」
「えっ、うん!そうです!」
「この子、吹奏楽部でトロンボーンをやっていて。頑張ってるみたいなんですよ~」
「はい、いつも見ています。皆木さんの努力家な部分は……とても素敵だと思います」
「ふふ。よかったねにいな、先生が褒めてくれてるよ」
保護者の前だからっていうのもあるかもしれないけど、ここは天国かな……?
きゅっと唇を噛んで、わたしはスクールバッグの持ち手を握った。
「じゃあお母さんそろそろお仕事に行かなくちゃ。にいなも気をつけてね」
「あっ、わたしも行く!じゃあ先生っ、これからよろしくお願いしまーす!!」
ありがとう、水漏れ。
できればあと数年間はその状態をキープしていてください。
先生にぶんぶんと手を振って、玄関にカギをかけたお母さんと一緒にエレベーターに乗り込む。
ドキドキと叩く心臓のままエントランスを出て、バス停方面へ。
けれどお母さんが乗った車が見えなくなってから、わたしはUターン。