あの放課後、先生と初恋。




「ここは膨らませるイメージで……っと。あとはなんて言ってたっけ…」



そしてわたしが向かった場所は堤防だった。

広大な海が眺められる、わたしのお気に入りスポットだ。


この時期になると海水浴をしている人たちがちらほらといて、楽譜を開いてブオーーッと音を響かせた。


こうして今日もわたしはひとり、部活での練習メニューを一通り繰り返すのだ。

まるで変わらず部活に参加しているかのように。



「よーし休憩!おべんとおべんとっ」



……ありがとう、お母さん。
でもごめんね。

部活に入ってから、お母さんには結構ウソついちゃってる。



『夏休み、あなたは練習に来なくていいわ』



わたしに構っている暇はないのだと。

初心者に丁寧に教えている時間なんか、ないのだと。


そう部員全員の前で言われてしまったのは数日前だ。



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