あの放課後、先生と初恋。




「……皆木さん」



散らばる部員たちのなか、坂田さんはわたしにまだ何か伝えたいことがあるようだった。

自信がなさそうな彼女に、わたしは首を傾げながら「どうしたの?」と、やさしく聞く。



「前は……ごめんなさい」



いつかに教室で、迷惑はかけるなと言われたことだろう。

初心者のわたしが同じクラスというだけで自分たちにも影響があると、言われてしまったんだっけ。



「ずっと皆木さんに部活を辞めて欲しいって思ってたのは本当だった」


「…うん」


「けど今は…、すごい頑張ってるなって思うし、いつか一緒にコンクールで演奏できたらいいなって思ってる。…だから前のことは……許してください」


「許さない!!」



わたしの少し強めな声に、見守っていた先輩や後輩たちが動きを止めた。

喧嘩だと思われたのか焦り出す1年生たちを、3年生がそっとなだめる。



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