あの放課後、先生と初恋。




「…僕たちはお互いに結婚しているんだ。僕には妻がいて、きみにも夫と娘がいるだろう…?」


「えっ───!っ、んむっ…!」



そうっと覗いてみた瞬間だった。

驚きの人物が立っていたことにわたしは咄嗟に声を出してしまい、ギリギリのところで背後から先生に口元を手で塞がれる。



「……あっぶねえ」


「ご、ごめん、先生……」


「……どういうことだよ、あれ。なあ」


「う、うん…」



なんとかカラスの鳴き声が重なってくれたことでセーフだったものの、わたしたちはそれどころじゃなかった。

先生も驚いてる……。
そりゃあそうだよ。


だって、体育館裏で抱きあっている男女は────



「和久井…先生……」



と、社会科の西(にし)先生なのだ。


間違いない、ぜったいそうだった。

声もそうだし、モロ見てしまっているんだわたしたちは。



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