あの放課後、先生と初恋。




声をかけながらぞろぞろと続いたのは、3年生の顔ぶれたちだった。


この噂はもちろん先輩たちの耳にも入っている。

そして吹奏楽部が今、窮地に立たされているということも知った上で来てくれたんだ。



「にいな!ほらみんなを奮い立たせる一言!」



えっ、わたし…!?

そう言ってきたのは落合先輩だ。


部活をしていたときはいつも長い髪の毛をキッチリお団子ヘアにまとめていたけれど、今は下ろしている。



「きょっ、今日は今日の風が吹くっ!!」


「…ふふっ、だってみんな!今日は今日の風が吹く!!」



あ……、戻りました仲間たちの笑顔。

わたしはきっとこういうポジションなんだろうなって、最近になって明確になってきた。


ぐっとこぶしを握ったわたしに、全員が「おー!」と続く。



「────ショボすぎわろた」



そのときだった。



「イマドキのネット用語で言うならこんなところか?ああ、笑うって意味で草っていうのも使うんだったか。んーっと、そうそう大草原不可避。
ただ僕はアナログ派でね。つまり残念だ、おじさんの心には響かなかったな」



聞き慣れない声が聞こえたのは、定期演奏会で発表する1曲目の合奏がちょうど終わった頃。



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