あの放課後、先生と初恋。




先生も今日はコーチとして忙しいだろうから、わたしもこのまま帰ろう。

そう思っていたときだった。



「…あの子は……」



スタジアムの裏側。

目立たない場所に座って、スプレーを当てられた左足を見つめているユニフォーム姿の男の子がいた。


その隣にいる、顧問である先生。


………足をかけられて転んでいたエースストライカーの子だ。



「俺なら平気です。明後日も出ます、できます」


「肉離れを起こしてる可能性がある。すぐに病院に行け、いいな」


「…………、」



卓球をやっているときは、そこまで大きな怪我というものを経験しなかったけれど。

スポーツでいちばん怖いのは怪我だ。



「ここで無理して選手生命を終わらせたいか」


「…こんなの、大丈夫なんですよ。少し捻っただけです」


「いま無理をすると、最悪そうなる可能性があるから俺は言ってるんだ。…おまえはまだ1年だ、来年と再来年もある」



それだけを言うと、先生はその子の背中をポンッと叩いてからスタジアム内へと戻っていった。



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