あの放課後、先生と初恋。




残された男の子といえば、悔しそうに唇を噛みしめながらふくらはぎを見つめている。

どうしようかと迷った末、わたしは近づいた。



「おっ、お疲れさまでした…!」


「……………」


「とてもっ、すごくっ、応援したいと思う試合でした…!!」



いい試合だった、とは言えなかった。
すごい試合だった、とも。


だから応援したいという言葉選びは、果たして彼にどう映ったかは分からない。

でも本当に嫌味なんかじゃなくて、元気を出して欲しくて、ただそれだけだった。



「……皆木さん、」


「へっ」



伝えるだけ伝えて去ろうとしたのだけれど、弱々しく引き止めてきたのは彼のほうだった。

名前を呼ばれてつい。



「……皆木先輩、ですよね。2年生の」


「ご、ご存知で…?」


「はい。いつも賑やかで元気で……一生懸命な先輩だなって思ってました」



賑やかで元気……。

一生懸命と言われて嬉しい気持ちはあるけど、賑やかで元気って単にオブラートに包んでるだけで、つまりうるさい先輩ということかい。



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