あの放課後、先生と初恋。




「悔しいね~。あのPKがなかったらさ、勝ってたかもなのに」


「ねー。こっちのキーパーも結構頑張ってたけど、相手は足も速いしディフェンスも強いし、めちゃくちゃレベル高かったー」



あまりサッカーには興味ないのかなと思っていた後輩ちゃんたちでさえ、さすがに白熱した試合だったということだ。

一般客の移動のあとにわたしたちの自由が訪れるため、スタジアム内のこのトイレも空いていた。


個室から出ようとしたが、もう少し盗み聞きをしてもいいのかもしれない───と、思ったのが間違いだったんだ。



「てかさ、皆木先輩。まじウケるよね」


「えー、言っちゃう?本人はあんな必死になって先輩してるんだから黙っててあげようよ~」


「だっていちばん浮いてるのも下手なのも自分のくせに、見ててイタすぎでしょ。ちょっと吹けるようになったからって勘違いすんなよって感じ」



声で、なんとなく誰と誰が話しているのかは察しがつく。

だってわたしと一緒で嬉しいって笑ってくれた子だし、今日もわたしの鼓舞にやる気を出してくれたような子たちだ。



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