あの放課後、先生と初恋。
「わたしのせいでいろいろ嫌な思いさせて、ごめん。でもわたしは……、鈴高で頑張っていきたいと思ってるから」
「皆木、せんぱい」
「仲良くやろう。…みんなに認めてもらえるように、わたしも努力する」
彼女たちの隣に立って手を洗って、トイレを出る。
どんより雲が広がっている空は、しばらくすると雨が降ってきそうだ。
「…………ふってきた…」
傘を差している人間はまだいない。
頬に流れる雨を、わたしだけがゴシゴシと陰で拭っていた。
スタジアム裏の大きな木の下、ベンチに座って雨宿り。
遠くで先生らしき人物が生徒たちを引率しては、涙を流す3年生に言葉を投げかけている。
「…応援、さんきゅ」
そんなことを言ってくれるのは先生だけだ。
気づけばスタジアム周辺に生徒や一般客の姿はなく、彼の声だけがわたしの耳には届いてきた。