あの放課後、先生と初恋。
「去年からいつも聞いてたよ、おまえの音。ずば抜けて下手くそなんだ。けど……俺は気に入ってる」
「………すき?」
「……………」
「わたしの音っ、……すき…?」
好きだ、と。
もうそれでいいと自分を褒めてあげようとしたわたしに、こんなズルい追い討ち。
「────……にいな」
「っ…!」
わたしの後頭部、わずかな優しさで撫でられる。
涙を隠してくれているのか、泣き止ませようとしてくれているのか。
どちらにせよ間違いだらけのコミュニケーションだ。
「……はると、くん」
そんなふうに応えると、離れてしまいそうだったぬくもりが戻ってくる。
時間なんか止まっちゃえ。
法律なんか、なくなっちゃえ。
この幸せを法律が消し去るというなら、わたしは平気で罪を犯したい。
「遥人くん…っ、………すき」
なにかを我慢するような甘い吐息が、首筋に触れる。
こんなにもあつい12月は初めてだ。