あの放課後、先生と初恋。




然くん、わたしは君に格好いいところなんか見せられないような先輩だよ。

さすがに笑っちゃったかな…。
これじゃあ然くんの怪我にも悪影響だよね。


いつか綾部先生に「最高だ」と言わせることが、近頃の吹奏楽部の目標にもなっていた。



「お疲れさまでした、先輩」


「えーっ、待っててくれたの…?」


「今日は通院日でもないので、俺も退屈だったりして。教室で課題とか終わらせてました」



この季節はすぐに暗くなってしまうため完全下校は18時なのだけど、コンクールを控えている吹奏楽部には関係がない。


19時半を過ぎた部活終わりの下駄箱には然くんがいた。


今日のお礼をちゃんと伝えたかった、だなんて。

わざわざいいのに~なんて言いながら靴を履き替えるわたしを、彼がどんな顔で見つめていたことか。



「へへ。格好悪いとこ見せちゃって…」


「そんなことないです。にいな先輩しか見えなかったくらい、格好よかったです」


「えへっ。ほんと~?いまの子ってお世辞うまいねえ」


「お世辞じゃないですって」



隣に並ぶと身長差が目立つ。

後輩のはずなのに男の子ってだけでこんなに違うんだ…。



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