あの放課後、先生と初恋。
「俺、綾部先生がにいな先輩を“切り札”って言っている意味が分かりました」
「…え?」
「にいな先輩の音にはパワーがあるんです。それは見ている側が想像もできないようなチカラがまだ込められてるんじゃないかって、そう思わせてくれるパワーです」
まさか君もわたしにそんなことを言ってくれるだなんて。
先生と、綾部先生と、然くん。
3人だなんて贅沢だね、わたし。
「…ありがとう。これからも頑張る!」
「はい。俺が誰よりも応援してます」
「ふふっ、わたしも然くんを応援してる!」
「……それは、いちばんですか?」
「え?」
「────く、黒崎くん!」
そのとき。
校舎を出ようとしたところで、然くんの名前を呼んだ女子生徒がいた。
1年生の子っぽくて、わたしはとりあえず空気になる。