あの放課後、先生と初恋。




1年間やってみて、わかったこと。

わたしには楽器の才能がない、リズム感がない、繊細な動きが苦手。


新入生にもとっくに抜かされちゃっていることは知っている。


笑い者だっていうのも………知ってる。



「───やることの意味ってのは、本人が感じることだ」


「っ!!」


「周りが勝手に決めつけることじゃねーな。決めつけていい理由もない」



それは教卓の上で集めたノートを確認していた副担任だった。

わたしの背中をぽんっと押すみたいに、言葉で光を与えてくれたのは。


気がつけば教室内に残った人数は日直の静かな男の子のみ。


進学コースではない放課後の教室というものは、ずいぶんと静かなのだ。



「どんなことにも言えるが、仲間を信じないチームは結果もそれなりにしかならないぞ。そこは実力なんか関係ない」


「でも先生、皆木さんは…っ」


「頑張ってるよ。ブーブーブーブー、飽きもせず吹いてる。たしかに努力の種類がおまえたちとは違うだろうし、おまえたちのほうが今までたくさん練習してきたかもしれない。けど………それでも皆木は頑張ってんだよ」



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