あの放課後、先生と初恋。




『俺、勉強すっごい苦手です』


「えっ、そうなの!?」


『はい。いつも赤点常習犯で』


「………わあ」



然くんは至って今までどおりだった。

学校では挨拶もしてくれるし、何かあると声をかけてくれる。


ただメッセージの頻度が多くなったり、ふとしたとき「声が聞きたくて」なんて理由で電話をかけてくる今日のような夜。



『あ、やっぱナシでお願いします今の』


「へっ」


『……かっこわる…、にいな先輩には格好いいとこだけ見せたいのに…』



わたしすごくズルいな…。


先生が好きなのに、然くんの電話に応えちゃってる。

先生が好きなのに、こうして別の男の子と夜にベッドで電話してるんだ。



「そっ、そろそろ寝よっか!お互い明日も部活だしっ、がんばろう!」



無事に肉離れが治った然くんは、明日の土曜日も部活に行く。

わたしも15時まで吹奏楽部。


もう3月になるんだ。
近づいてくる卒業シーズン。



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