あの放課後、先生と初恋。




『…もう寝なくちゃダメ、ですか』


「え、っと、…然くんが眠いかなって…」


『俺は平気です。…もう少し声、聞いていたいんです…けど』



この関係性はすごく恥ずかしくて、胸の奥がコショコショとくすぐられるみたいにこそばゆい。

彼はわたしのことが好きで、春の大会で優勝したらわたしにもう1度告白をすると宣言しているのだ。


それを知った上で、わたしも然くんに笑顔を向けている。


見方を変えればわたしの言葉ひとつでカップルになれちゃう、この距離感。



「じゃ、じゃあ……あと3分だけ」


『あと5分ですか?』


「えっ、いや3分ね!」


『わかりましたあと10分ですね。ありがとうございます』


「………なんだと!!」


『ははっ、にいな先輩がスゲーにいな先輩してますね』


「なにそれっ!もー!然くんいじわるだよ…!そんな子キライ!」


『え、待ってください冗談です。だって…可愛かったから。いやでも前世からやり直します、ごめんなさい。嫌い…ですか…?』


「うそうそうそ!!…ふふっ」



ねえ、先生。

この子はすごくすごく、いい子なの。



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