あの放課後、先生と初恋。
「僕がきみたちを指揮するんじゃなく、きみたちの演奏が僕を指揮させてくれよ」
そして誰よりも闘士を抱いている人間は、綾部先生だったのだ。
「新学期からまた始めるぞ。こんなことを言ってくれた審査員どもに、次こそは言わせもしない音を届けてやろうじゃないか」
「「「はいっ!!!」」」
「あと皆木、おまえも他人事じゃないからな。今回の評価を胸に叩き入れておけよ」
「あっ、はい…!」
「明日からは君たちも少し遅い春休みだ。学校も閉鎖しているから、来るんじゃないぞ。…今日はご苦労」
………ちょっとだけ悔しいな。
わたしもこの悔しさを完全に味わえなかったことが、悔しい。
ただこれも、わたしにしかないバネになると思うから。
秋の最後のコンクールではぜったいメンバーになるんだ。