あの放課後、先生と初恋。




まるで見てはいけないものを見てしまったような気持ちだった。

禁断とか、許されない恋とか、そんなドラマのような言葉が当てはまってしまうような。


一浦先生のことを初めて“先生”とは思えなかった瞬間だった。


そして単純に知りたくなった。

あの一浦 遥人が特別に扱うんだから、そこまで応援するんだから、彼女にはなにか飛び抜けた才能があるんだと思って。



『おーーい、ランナーー?サボるんじゃないぞーーー』


『サボってねえ!!あと20周…っ』


『よしよし。行ってこーーーい』



なかったんだ。

彼女に才能なんか、どう見たって。


文化部のくせにひとりだけグラウンドを走らされてるし、俺のクラスの吹部の1年だって悪口みたいなことまで言っていた。



『皆木、』



でも、グラウンドで走る女子生徒に必ず近づくんだ一浦先生は。

1日に1回は声をかけて、心配そうにも見つめていた。



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