あの放課後、先生と初恋。




どうしてそんなに気にかけるんだろう?と、俺はだんだん分からなくなってきて。

けれどまたある日、11月の部活中に先生が午前で指導を抜けた日があったのだ。


12月のインターハイに向けた大切な予選中だというのに。



『悪い。1時間後にはまた戻ってくるから、それまで頼んだぞ千田』


『わかりました』



キャプテンに特訓メニューを伝え、先生は小走りで練習場を出ていった。


何にそこまで急いでいるんだろう。

俺はさほど気にはしていなかったが、先輩部員たちが何気なく東棟の3階を見上げたときだ。



『そういや今日って、吹部いないんだっけ』


『ああ、定期演奏会とか言ってたよな』


『わりと吹部の演奏ってやる気になるから、俺好きなんだけど』


『あー、オレも』



言われて思い出した夜があった。

ひとりの女子生徒の目をしっかりと見つめて言葉を投げかけていた、一浦 遥人を。



< 233 / 281 >

この作品をシェア

pagetop