あの放課後、先生と初恋。




あれは教師ではなく、男として言っていたんだ。


そして俺にとっても彼女が特別なひとになってしまった出来事は、俺たちサッカー部がインターハイ出場をかけた準決勝の日。



『おっ、お疲れさまでした…!とてもっ、すごくっ、応援したいと思う試合でした…!!』



俺は相手チームの選手に足をひっかけられて、ふくらはぎの肉離れを起こした。

先生や先輩たちにはただの捻挫だと言っていたが、決勝は出られないだろうと本当は自分でも分かっていたんだ。


3年生の最後のチャンスと夢だ。


レギュラーになれなかった先輩から背番号を奪っておいて、1年でエースにもなっておいて、怪我だなんて信じたくなかった。



『吹いてくれませんか』


『え…?』


『…なんでもいいので、吹いて欲しくて』



たまたま通りかかって声をかけてくれた皆木 にいなという先輩に、俺はそんなことを言っていた。


気持ちが落ちていたのは本当。

これで一浦先生にも失望されると思ったから、怖かった。



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