あの放課後、先生と初恋。
『………!』
べつに吹奏楽のことなんて、俺はこれっぽっちも分からない。
楽器で思いつくものは金管楽器というよりはギターとかベースとかのバンドだ。
多少のリズム感のズレがある音。
でも、力強くてまっすぐで、彼女の音は俺の背中を押しながらも支えてくれた。
『ふれーっ!ふれーっ!!ガンバレガンバレ鈴高!!ファイトーーー!!』
周りの目を気にもしないでエールを送ってくれた先輩に。
俺はこの瞬間、恋をした。
同時に今まで憧れていた先生がライバルにもなって、ぜったい負けたくない存在に変わったのだ。
「あっ、ごめんなさい。急にかけて…」
大丈夫!と、ロードショーがそんなにも面白かったのか、元気な声がスマホ越しに聞こえてきた夜。
『わたしもごめんね、今日は。いろいろ……驚かせちゃったよね』
「…いや、平気です」
『隠してたつもりはないんだけどっ、……わざわざ言うことでもないのかなって』