あの放課後、先生と初恋。




「にいな、おじいちゃんに買ってもらったトロンボーンはどう?部活で使ってる?」


「も、もちろん使ってるよ!ピカピカだからみんなに羨ましがられるっ」


「ふふ。よかったわね~」



ごめん、お母さん。

じつはまだ1度も学校で吹けたことがないんだ…。


一応は吹奏楽部として自分の楽器ですと、すこし前に胸を張って紹介したんだけれど。

先輩に「まだ早いと思うけど」なんて言われるオチ。



「ほら大会がもうすぐ始まるって言うじゃない。お母さんも観に行こうと思ってるの」


「えっ、いやでも、主役は3年生だから意味ないよ?」


「あらそう?じゃあ11月に定期演奏会があるみたいじゃない。それにはにいなも出られるんじゃない?」


「……うん。そうそう、もしかしたらね!でも定員は55人だから、わたしは補欠かも」


「え~、そんなにすごいところなの?」



そうなの、そんなにすごいところなの。

どうにもお母さんは鈴高の有名さをあまり分かっていないみたいだ。



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