あの放課後、先生と初恋。




わたしの家は母子家庭で、父親はわたしが物心つく前に病気で他界している。

女手ひとつで育ててくれて、私立高校にまで通わせてくれて、部活もさせてくれて。


本当にお母さんには感謝してもしきれない。



「ねえ、あのひと誰?」


「ちょっと!だれって、2年の皆木先輩じゃん」


「あーー…、あの初心者っていう?」



集められた放課後の第3音楽室。

今日から数日間、わたしも一応は練習に呼ばれていた。


しかし後輩からの心ない言葉、思っていた以上にグサグサと胸に突き刺さってくる。



「えっと、3年生を送る会の練習をするって……」


「……あっ、そっか、皆木さんもだ。ねえ坂田ちゃーん、皆木さんどうするー?」


「皆木さんはまずは全体の様子を見てて。たとえば1部のパートだけ吹くとか、そういうふうにするかもだから」


「…はい」



はい、って。

わたしだって同じ2年生なのに変なの。



< 26 / 268 >

この作品をシェア

pagetop