あの放課後、先生と初恋。
「…名波くん、」
わたしのぶんまで頑張ってと、笑うつもりだった。
先輩として、3年として、メンバーを奪ってきた後輩に。
「前…、言ってたこと、覚えてる……?」
最低だね、わたし。
真剣勝負で負けたほうがマシだとか言って、結局。
譲ってもらおうとしてる。
名波くんは前に、自分は趣味で吹部に入っているようなものだから、もしメンバーに選ばれたらそのときはわたしに譲る───と言っていたんだ。
「いいんですか?いまの先輩に代えたらたぶん、東海大会すら危うくなりますけど」
「…………、」
「皆木先輩は恋愛より他にやることあるでしょ」
刺々しい言葉が胸に突き刺さる。
わたしだけじゃないよ。
吹奏楽部には他にも彼氏を持っている子はいる。
去年だって野球部の彼氏のためにメンバーを外されそうになった先輩だって。
わたしだから許されないの……?
できない奴が調子に乗るなって、そう言いたいのかな。