あの放課後、先生と初恋。
まっすぐ、届け
「みんな早いね。さすが時間厳守な吹奏楽部だな」
「……先生がこの時間にって指定したんですよ」
「ああ僕は基本、遅れて登場するヒーローだから」
全国大会まで7日を切った放課後。
顧問から空き教室に呼ばれたのはそれぞれの楽器のパートリーダーたちと、部長、副部長。
それから名波くんとわたしだった。
「まあ、なんとなく察しは付いているだろうが単刀直入に言うと、僕は今回の全国大会でトロンボーンに当てる人間を君たちどちらかで迷っている」
最初に先生が見つめたのは、名波くん。
「たしかに全体的な安定感で選ぶなら名波一択だ。しかし、今回の自由曲でのソロパートに相応しい人間は皆木と見ている」
つぎにわたしを見て、最後は集めたリーダーたちを。
「だから僕は仲間である君たちに決めてもらうことにした」