あの放課後、先生と初恋。
牧野先生から氷袋を奪って、当てていた表面を触っては「あちいな」と。
牧野先生は26歳で、男子生徒にはちょっと目に毒な色気あるお姉さんなのだ。
タイトスカートの下のストッキングはぜったいガーターになってると、わたしは思っている。
なのでそんなふうにナチュラルに関わりあうの、できれば見たくない。
「アホ。おまえはこっちも冷やせ」
「わっ」
それは豆だらけの手のひら。
ちゃんと見ててくれたんだろうなっていう証が、遥人くんの優しさだった。
「…いてえだろ、これ」
「へっちゃら!」
「トロンボーン、吹けんのかよこれで」
「もちろん!あっ、やっぱうそ!先生がいっしょに写真撮ってくれれば復活する!!」
「動くな。皮が余計めくれてエグいことになるぞ」
「……いてて」
罪悪感なんか感じなくていいんだよ?
だってわたしが勝手にやったことだもん。
先生のためなら何だってできること、伝わってくれた?