あの放課後、先生と初恋。




そんなわたしたち後輩は今日、ノートを手にしながら3年生の合奏を見学している。

としても中には3年生を出し抜いてコンクールメンバーに抜擢された2年生や1年生も混ざっていたりと、いわゆる実力社会だった。



「弱い弱い弱い!!何度も同じことを言わせないで。ピッチもぜんぜんなってない!終わり、やめるわ」



え、やめるって……?
先生、まだ来て3分も経ってませんけど。

けれども和久井先生、本当に指揮棒を置いて指揮台からも降りてしまう。


そしてあっという間に音楽室を出ていった。


すぐに立ち上がったのは、学生指揮者でもある3年生。



「先生はそれくらい私たちに期待してくれてる。17時まで合奏して、そしたらまた先生を呼びにいこう」



いや……、ちがくない……?

普通に考えておかしいよ、それは。


ふだん全体練習にすら参加できないド素人が言えたことじゃないかもだけど、あれはただのヒステリックおばさんだよ。



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