あの放課後、先生と初恋。
「常に試合を意識してパスしろーー!!サイドハーフガラ空きにすんなーー!!」
窓の外から聞こえてくる、大好きな声。
こんなにたくさんの声が聞こえてくるというのに、先生の声だけが分かっちゃうだなんてどうなってるんだわたしの耳。
「シュートシュート!思いきっていけ!!」
そんな声を聞くと頑張ろうって思える。
だから好きなの、この放課後だけは。
わたしは窓際に立って息を吸い、マウスピースに吹きかけた。
「腹式呼吸、使えてる?」
「…えっ」
そのとき、わたしだけだった教室にまさかの人物が。
それは先ほど仕事を投げ出していた顧問の和久井先生。
「もう1度吹いてみなさい。一息でどれくらい続くかやってみて」
うそ、初めて話したかも……。
入部したときも部長さんの伝達だったし、わたしはほとんど個人練習。
合流したとしてもパート練習ばかりだったから。
だからわたしにとって正直、この人が顧問ということが新鮮でしかない。