あの放課後、先生と初恋。
「でも…、」
「音を出してみるだけでいい。アンブシュアはできるんでしょう」
「は、はい」
すーーっと、息を吸う。
楽器演奏には腹式呼吸が大切だと知っているから、お腹にいっぱい空気を吸い込んだ。
ブオーーーーーと響いた、アルト。
「8小節……か」
秒数でいえば15秒ほど。
長いのか短いのか、音楽の世界ではどうなのかはわたしには分からない。
「もっといけそうね」
「はいっ、実はできます!」
「やってみて」
「はい!」
そこまで悪い人では、ない……?
厳しすぎて退部していく生徒多数でもあるのが、この吹奏楽部だとウワサもされていたけれど。
実際はそうでもないんじゃないかって、そんなことを。
「あなたはどうしてトロンボーンをやろうと思ったの?」
「えっと、明るくて活発な人が向いてるとネットに書いてあって…!わたしにピッタリなんじゃないかって…」
「…そう。夏休みは忙しいわよ、合宿もあるから」
「はいっ、頑張ります…!」