これが最後の恋だった
第五話 気付いた気持ち
その頃――
「ねぇねぇ、今日加奈子さぁ、蒼太君と一緒に帰ってなかった?」
「そう言えば二人で教室出ていくところ見たな~。加奈子ってば今日一日あたし達の中に入ってこなかったけど、何かあったのかな?」
「もしかして蒼太君と付き合ってるとか!?」
「えーー!まさかぁ!?」
「だってあいつ前から蒼太君の事気に入ってたっぽいし。本人は隠してたのかも知れないけどバレバレ。この間裏庭でコクってるとこ見ちゃったんだよね。」
「げっ……マジで?あいつ本気だったんだ……」
「っていうかあたし思うんだけど、あいつと蒼太君って絶対似合わないよね。だってあいつって性格悪いもん。蒼太君が好きになる訳ないし。」
「だよね~」
放課後の教室で女子のほとんどが加奈子の悪口を言っているのを、一人だけ離れた所から遠巻きに見ている人物がいた。
「……くだらない。」
その人物はそう小さく呟くとそっと席を立ち、音も立てずに廊下の向こうに消えていった……
病院からの帰り道、私と蒼太君は並んで歩いていた。
「良かったな。廉、あんなに喜んでて。」
「そうだね。あたし、あんな廉君初めて見た気がする。」
「……俺もや。」
二人で顔を見合わせて微笑む。と、その時――
ちょうど通りかかった曲がり角で誰かにぶつかった。結構な勢いだったからお互いに尻餅をついてしまう。蒼太君が慌てて近寄ってきた。
「おい!大丈夫か?」
「平気。あ、でも私よりこっちの人が……」
相手の人の事を気にしてそう言うと、蒼太君がすかさずその人に向かって手を差し出した。
「すいません、こちらの不注意で。大丈夫ですか?」
「大丈夫です。お構いなく。」
「あ、あれ?……もしかして大西さん?」
「え!?」
私の言葉に蒼太君が飛び上がる。そう、ぶつかった相手は蒼太君の想い人。大西絵理、その人だった。大西さんは汚れてしまったスカートをはたきながら一人で立ち上がり、無表情のまま蒼太君の方を見た。蒼太君はと言うとあまりの事にパニック状態になっている。
「わ!ななななな何でおおおおお大西が、ここここここここにいるのでござるのですか!?」
「何でって……学校の帰りだけど?」
「あ……そうでございますか。どうも……」
「……はっはーん。なるほどね。ちょっと蒼太君。」
ちょいちょいと蒼太君を呼ぶと、近づいてきた蒼太君の耳に口を近づけて囁いた。
「私の家はすぐ近くだし一人で帰れるから、蒼太君はちゃあんと大西さんを送ってくのよ。じゃあね、頑張れよ!」
「え?ちょっとまっ……!」
蒼太君が何か言う前にさっさと歩いていく。ちらっと後ろを振り返ると、まだあわあわしている蒼太君と相変わらず無表情な大西さんがいた。
(ああいうのを見てもまったくショックじゃないって事は、本当に吹っ切れたんだな。これからは心の底から蒼太君の恋の応援が出来るわ。)
そう心の中で呟いた。
.