これが最後の恋だった

「へぇ~、蒼太君は諦めて廉君が気になってるんだ。」
「うん。廉君って思ってたより真面目で良い子なんだよ。元気だし明るいし素直だし、私には無いものいっぱい持ってる。」
「そっか。加奈子じゃ蒼太君は似合わないって前から思ってたんだよね~」
「何それ、言うわね~あんただって似合ってないよーだ。」
「わかってるよーだ。」
 すっかり仲が良くなった私と美咲は小競り合いしながらも笑う。ここまでの関係になれたのはきっと廉君のお陰なのかも知れない。廉君と話してどういう人なのか知っていく内に、自分の考え方や信念がこれまでとは違うものに生まれ変わった気がするのだ。そんな不思議な力を彼は持っているのかも知れない。だから蒼太君も廉君と一緒にいて楽なのだろう。


 放課後、私は先生に頼まれたテストの答案を職員室に届けに行った。その帰り道、下駄箱の所を通り過ぎようとした時、聞き覚えのある声が聞こえて立ち止まる。

「ええか?大西が来る前に下駄箱に入れてくるんやぞ。」
「わ、わかっとるわ。そ、そんな事……」
「何ビビっとんねん、大丈夫か?」
「だ、大丈夫、大丈夫。ハ……ハハハ……」
「早よ行かんと大西来てまうで。」
「い、行ってくる……」
「頑張れや!」

(蒼太君と……廉君?どうして学校に?って、具合大丈夫なの!?)

 隠れて(?)いた柱の陰から蒼太君が出てくる。何故か私も近くの壁に張り付いて様子を窺った。

「あれ?何してるの、蒼太君?」
「お、大西……」
「どうしたの?何してるの、こんなとこで。」
「あ、いやその……決して大西の下駄箱に用があるなんて事はないですから。じゃ!」 
 そこへ大西さん登場。蒼太君は思いがけない遭遇にまたパニックになっている。さっきの蒼太君と廉君の会話から、ラブレターを大西さんの下駄箱に入れようとしていたであろう事がわかった私は笑いを堪える。

(まったく、何してんだか……)

 廉君の元に駆け込んだ蒼太君が鬼の形相の廉君に怒られている。遠くて何を言っているのかわからなかったけど容易に想像がつく。また笑いを堪えていると廉君が胸を押さえて蹲った。

(え……?)

 ビックリして固まっていると、蒼太君が慌てて廉君をおぶって走って行く。私はその後姿を見つめながらしばらくそこから動けなかった。

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