これが最後の恋だった

 廉君の事が心配になった私は、教室に行って鞄を持つと飛び出した。ちらっと見えた顔色は前に見た時と同じくらい青くて、最悪の場合を想像してしまう。でもこういう時に限って足が思うように動かない。早く病院に行かないと、早く、早く!!

「それではくれぐれも安静にお願いしますね。」
「はい……すいませんでした。」
 病院に着くと、主治医の先生が廉君の病室から出ていくところだった。廊下の角に隠れて様子を見る。先生が廊下の奥に消えるのを見計らって病室へと近づくと中を覗いた。

「大丈夫か?」
「うん、だいぶようなった。」
「そっか。」
「ごめんな……全部蒼太のせいになってもうて……」
「ええって。その通りやし。」
 そう言って蒼太君が笑う。それを見た廉君は少し悲しそうな顔をした。

「蒼太。『告白大作戦』は中止にしよ。」
「え……?」
「やっぱり無理やろ。下駄箱にラブレター入れるんも満足に出来ひんのやから。」
「廉……」
 廉君にぼろくそに言われて少し落ち込む蒼太君。でもすぐに回復すると意を決したように言った。

「俺、やってみるよ。」
「蒼太……」
「俺やって男や。やる言うたらやる!こ、今晩にでも!」
「……そっか、頑張りや。俺はここで祈っとるわ。『上手くいきますように』って。」
「げっ!廉に祈られたら神様も困るわ~」
「何をぉ!?」
 廉君がパンチを繰り出してそれを蒼太君が片手で受け止める。そして顔を見合わせて笑った。

(良かった……廉君が笑ってる。)

 あのキラキラした笑顔で笑ってくれるだけで、それだけでいい。どんな病気なのか、もしかしたら治らない難病なのかも知れない。それでも真っ直ぐに私を見て好きだと言ってくれて、その上友達思いで良い所ばかりの貴方が……

 ただ、笑ってそこにいてくれるだけでいい。そう思えた瞬間だった……

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