眩しい君の隣へ。

顔だけの私と,全部もってるあの人。

夏の日差しが暑い。

定評のあるこの長い髪も,切ってしまいたくなる。

けれど,そうしないことは,自分が何より知っている。



「ね,見て…! 若槻くん,前にいるよ」
「ほんとだ! 声かける? おはようくらいならいいかな」
「え~? どうだろー!!」



高校生って感じがするな。

私は視線を前に向けた。

顔良し,スタイル良し,身長は高め。

スポーツも万能な上,努力型で学力も高い。

社交的で受け身な彼は,よく笑う。

形容し始めたら,誉め始めたらキリがない。

そんな学校1のモテ男,若槻(わかつき) 千鶴(ちづる)がそこに居た。

駆けていく2人の女子。

嬉しそうに,若槻へ話し掛けるのを眺めながら,私も歩を進めた。

アスファルトの上に何かが光って,私はそれを拾う。

ガチャガチャで良くあるような,何かのキャラクターのキーホルダー。

2人のどっちかかな。

先程の2人を見ると,話し終えて興奮しているようだった。



「あの,これ違う?」

「あっ! これ私の! ありが……あ,ありがとう」



よそよそしい反応に,私はため息を1つ落す。



「いいえ,気を付けて」

「う,うん。ありがとう山本さん」



一目見ただけで喜ばれる彼と,一目見ただけで緊張される私。



山本(やまもと) 一花(いちか)は,人から敬遠されていた。
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