眩しい君の隣へ。

笑うじゃん。

「でも一花もいないんでしょ」



大きく息を吸った若槻が,拗ねたようにベンチに座り直す。



「その聞き方は失礼だと思うんだけど。後,いるからね,私」

「え"一花いんの?!」

「1年くらい前,からかな」



もう,そんななのか。



「いつ会ってんの? 全然聞いたこと」

「まぁ,ちょっと年上だからね」

「年…?!」

「彼,大学生なの。殆ど行ってないみたいだけど」

「あー」



そんなに?

流石に社会人は私だって選ばない。



「いいの? 男と2人きりとか」

「…」



びっくりして,言葉に詰まる。



「そんなこと,考えたことなかった」

「それはそれで,ちょっと刺さるんだけど」

「でも,大丈夫。多分そんなこと気にしないから」

「大人なんだ」



その声があまりに気に入らなそうで,つい表情が緩む。



「…笑うじゃん」

「え?」



唐突に,若槻が静かな声を出した。



「一花が笑うとこ,初めてみた」

「普段笑うようなこと,無いからでしょ。今のは若槻が面白かっただけ」
 


後,そんな若槻よりもずっと。



「私の彼氏は,若槻よりもずっと子供っぽい」

「へー。何で付き合うことにしたの? 元々知り合いとか?」

「好きって,言ってくれたから」



部屋着でコンビニにいた彼に,傘を貸して。

2回目に会った時,穏和な表情でそう言われたから。

外面とのギャップはすごかったけど,それだけで十分。
 


「え? それだけ?」

「そう」

「好きじゃないの? 相手のこと」

「好きだよ」



多分ね。

好きって言ってくれるし,必要としてくれるから。
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