眩しい君の隣へ。

みられたく,なかったな。

「なら,いいのか」



何か納得したような若槻を置いて



「飲み物買ってくる。若槻ってなに飲むの?」

「炭酸系なら何でも。買ってきてくれるの? 俺小銭無いかも。お札ならあるからそれで…」

「それくらい奢る。昼御飯と比べたら安い」

「? なにそれ」



私は自販機へと向かった。

何の味もない,けど甘いだけの炭酸と,桃のジュースを持って戻る。

若槻はそれを受け取ると



「今度なんか奢る」



そう言った。



「気にしなくて良い」


 
私も蓋をあける。

指先がつるっと滑って,掴んだはずの蓋が地面を転がった。

砂,ついてないといいけど。

深く考えず,身体を前に倒してそれを拾う。

今度こそ手離さないように,汚れをチェックしながら手の上に乗せた。

身体を起こそうとして,微かな痛みがピリッと全身に巡る。



「…っ」

「あ…ごめ」



顔だけ回すと,困惑した表情の若槻がいた。



「首の付け根,すごい色してるけど…」



ふぅ,と息をはく。

若槻に見られたのは,失敗だった。



「家の机の角で,ぶつけたの」

「でも」

「ぶつけたの」

「ほんとに?」

「そう。なかなか無いぶつけかたして,結構痛いから触らないで」

「ごめん」



本当は,彼に後ろから蹴られただけなんだけど。

そう言ってしまえば,若槻はまた別の想像をするだろう。

私は敢えて,ウソをついた。

私は現状に,不満なんてない。

彼を失う方が,ずっと怖い。

何でだろう。

こんな些細な痣でも,若槻には。

見られたく,なかったな。

また私の噂が1つ,校内を駆け巡るだろう。
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