さよなら、わたしの初恋


「あ、それ俺の」


 何も考えずに反射的に言った。


「っは⁉ これ、薫がもう飲んだやつだったの⁉」

「うん、そうだけど」


 慌てるはなびが何だかかわいくて、俺は少し気分が上がった。


「何、今さら間接キスしたこと気にしてんの?」


 からかうように言うと、はなびは唇を尖らせて言った。


「……そりゃあ、気にするよ。わたしたち、もう付き合ってないんだから」

「ははっ、意外とはっきり言うんだな」


 乾いた声で笑う俺を一瞥した後、はなびは鍵を持って玄関へ向かった。
 俺はすぐにその後を追った。


「どこ行くの? もう夜だし、危ねえよ」


 もう真夜中なのにはなびが外に出ようとしていたから、俺はどの立場から言っているのかも分からずにそんな心配をした。


「……、別にわたしがどこに行こうと薫には関係ないんじゃないかな」


 はなびからの鋭い指摘に、そうだよなと素直に思う。


「……ごめん。迷惑だよな」

「……うん」


 はなびは小さく頷いてから、俺に構わず外に出た。

 俺は慌てて靴を履いてその後に続く。


 階段を降り、駐輪場に行くとはなびが自転車を出しているところだった。

 その時に俺の中で良い考えが閃いた。

< 18 / 22 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop