さよなら、わたしの初恋
「あ、それ俺の」
何も考えずに反射的に言った。
「っは⁉ これ、薫がもう飲んだやつだったの⁉」
「うん、そうだけど」
慌てるはなびが何だかかわいくて、俺は少し気分が上がった。
「何、今さら間接キスしたこと気にしてんの?」
からかうように言うと、はなびは唇を尖らせて言った。
「……そりゃあ、気にするよ。わたしたち、もう付き合ってないんだから」
「ははっ、意外とはっきり言うんだな」
乾いた声で笑う俺を一瞥した後、はなびは鍵を持って玄関へ向かった。
俺はすぐにその後を追った。
「どこ行くの? もう夜だし、危ねえよ」
もう真夜中なのにはなびが外に出ようとしていたから、俺はどの立場から言っているのかも分からずにそんな心配をした。
「……、別にわたしがどこに行こうと薫には関係ないんじゃないかな」
はなびからの鋭い指摘に、そうだよなと素直に思う。
「……ごめん。迷惑だよな」
「……うん」
はなびは小さく頷いてから、俺に構わず外に出た。
俺は慌てて靴を履いてその後に続く。
階段を降り、駐輪場に行くとはなびが自転車を出しているところだった。
その時に俺の中で良い考えが閃いた。