さよなら、わたしの初恋

はなびside



 ヒュ~~~、ッドォーーン‼

 夜の空に大輪の花が咲く。


 あらゆるところから歓声が上がる。
 沢山の人たちに囲まれて、わたしは一人寂しく空を見上げた。


 一拍遅れた後に見る花火は、何だか歪んだ形に見えた。
 それはきっと、一人が憂鬱だからに違いない。


「君可愛いね! 一人?」

「うわまじじゃん。超かわええ」


 下品な笑みを浮かべてわたしに声をかけてきた男二人組。その人たちの顔を見て、思わずため息が零れた。


「……見て分かりませんか」


 自分の口から出た低い声に少し驚いてしまう。だけどすぐに仕方ないかと思い直す。


 ──だって、今日は。

 終わらない哀しみに存分に沈める日なんだから。


「あ、あーそうだね」


 相手の男は気まずそうに目を泳がせて、もう一人の男に耳打ちした。
 それからすぐに二人は背を向け去って行った。


 そんな二人の背中をぼんやりと眺める。


 ──もし、今わたしに声をかけてきた人が〝あいつ〟だったら良かったのにな。


「……っなに、馬鹿なこと考えてんのよ」


 ふと思い浮かんだ叶わぬ願いに、嫌気が差した。


 自分の頭を強く叩いて、重い腰を上げる。

 ……もうこれ以上、ここにはいられない。

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