ハミルEN
13 結婚
「えーんえーんコーン」
小学2年生のピエハが泣いている
「どうした、ピエハ」
チャリルが学校帰りのピエハを発見して声を掛けた
「僕のことみんなが変なやつって言ったコーン。もろこし族なんて聞いたことないって言うコーン。えーんコーン」
「ピエハ。お前はポテトを超えるコーンのお菓子を作るために生まれてきたんだろう」
「コーン。でもやっぱりポテトチップスに勝てるお菓子はないコーン!みんなお菓子の王様はポテトチップスだ!って言うんだ。僕もそう思ったコーン」
「ピエハ・・馬鹿野郎!諦めるな。まだ小学2年生だろ。これから色々なヒラメキが生まれるさ」
「ほんとコーン?」
「ああ」
少し俯くピエハ
「どうしたピエハ」
「うん、それから」
「なんだ」
「こいつハミルENなんて変なところに居るんだって言われたコーン」
「ふん」
「お金で家族を築くとか結婚できないとか、ヤバい集団だって言われたコーン」
「そうだ。俺達はヤバいんだ。良く覚えておけ。お前も変だし、俺たち大人はもっとおかしな連中だ。心に刻め、抗うな」
「そんな」
「いいか、自分で自覚していれば傷つかないんだ。腹も立たない」
「でも」
「一番下だと思え。ただ信じる道を進めばいい。続ければいいんだよ。ひたむきにやってりゃ変わってくることもある。いいか、自分じゃなくて周りが変わってくるんだ。だから、変な集団って言われたってやり続けりゃいい。それがよけりゃあ周りの見る目が変わるし、悪けりゃあ何も変わらないだけだ」
「う、うん。でも、」
「どうした」
「学校が、つらいコーン」
「行かなくていいぞ、明日から」
「コーン」
複雑な表情を浮かべるピエハ
苦しいんだろう
ピエハは辛さや喜びの感情が高まると言葉遣いが変わる
「どうしてハミルENは結婚禁止なの」
「必要ないからだ」
「どう必要ないの」
「いいか、ピエハ。よく聞け。遠い遠い昔から結婚ってのは、あるんだ。
なぜだと思う?」
「わからないよ」
「結婚が必要だったのではなくて、一夫一妻が必要だったんだ」
「いっぷいっさい?」
「そうだ。1人の夫と1人の妻。このルールがなかった場合、誰の子供か分からないんだ。ピエハにはまだ早いかもしれないが、女性が複数人と交際すると誰の子供だか分からない。子供の父親を明らかにするために結婚という名の一夫一妻制度というものを作った」
「うん」
「わかるか」
「続けて」
「男は鍵で女は鍵穴だ。これがずっと長い歴史で続いてきた人間の形態だ。男は挿して鍵を掛けたら外に仕事に出る。女は挿されて鍵を掛けられたら家の用事に取り掛かる。つまり、その家の鍵穴さんという妻は鍵くんという夫の鍵しか挿されてはいけない。これが家制度であり、結婚の形態だった」
「うん」
「そうすることで、そこの家で生まれた子供はその夫と妻の子供だという結論になるんだ」
「うん」
「実際は夫以外に鍵を渡してる妻もいる。しかし、その家で生まれた子供は夫以外の鍵の子供でもその夫と妻の子供なんだ」
「うん」
「これが結婚だ」
「もっとわかりやすく」
「結婚で女を閉じ込めて、他の男とSEXできないようにしたんだよ」
「コーン」
「じゃないと困ったんだよ。男は。自分の子供の確実性が欲しかった。そしてその結婚とは美しいものかのように印象づけてきたんだ」
「コーン」
「実際はこの世が生んだ、大束縛だ。LOVE&PEACEにFREEDOMが入らなかったのは、そんなことも一因だろう。
自由は結婚と相反してるからな」
「でも、どうすれば」
「時代は変わって、DNA検査を義務化すればいいだけだ。それで全ては変わる」
「結婚がないと浮気とか増えるんじゃないの」
「そもそも、そこまでメクジラ立てることでもないってことだ。今だって割と浮気くらいは許されちまうんだよ。不倫ってのが問題になりやすいだけだ。だからその不倫ってのは、それごと消滅できるんだ」
「浮気」
「それくらいは残しておいた方がいいんだ。あまり綺麗すぎると汚したくなるから、またガチガチの制度作るんだよ」
「それで汚すの?」
「そうだ。汚したり、破ったりするためっていうのも一つだ。ルール違反の妙だ。本能に近いな。少しの遊びもなくなると今度は結婚以上にガチガチのを作るぞ」
「ゴク」
「それに鍵の役割も変わってきたからな。指紋認証や顔認証なんかもできて挿したり挿されたりすることもなくなって、男と女の役割なんかも変わってきただろう。色々と連動してるんだよ」
「家」
「そうだ、だから。今まで通りの形態が良ければ一緒に住めばいい。男も女も2人の子供もな。ただ籍を入れないし、財布は個人個人で握る、子供以外はな。別々に住んでもいいし、その代わり金では繋がってる。今の世の中で一番影響力が大きいのは金だ。愛やなんだいくら謳ってもカネなんだよ。だからそれで繋げるのが、金で家族を築くのが一番理にかなっている。一番重要な物で繋ぐんだよ。飽きたらカネを消すさ。愛が見えてきただろ」
「うーん、よくわかんないコーン」
「そうだ、それでいい」
「DNA検査?」
「そうだ。今この世の中でどれだけの夫が他人の子を育ててると思う。自分の子供のつもりでだ」
「」
「そうだ、触れちゃいけないんだ」
それが結婚だ