政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
1-11 相手にされない!
午後3時半――
私とミラージュは昼食後、特にすることも無かったので2人で部屋でゴロゴロして過ごしていた。
「退屈ですね……レベッカ様……」
ミラージュはレース編みをしながらポツリと呟く。
「ええ……本当にそうね……」
読みかけの本をパタンと閉じると、溜息をついた。
「やはりこんな扱いは納得出来ませんよ。運ばれてきたお食事は豪華で美味しかったのですが、食器を下げた後は放置ですよ? 放置っ! 明日は大切な結婚式があると言うのに、打ち合わせも無ければドレスの準備が出来ているのかも分からない。この分だと指輪だって用意してあるかどうか分かりませんよ!?」
何故か立ち上がるミラージュ。
「あら? ミラージュ。どうしたの? 急に立ち上がったりして」
「レベッカ様! 退屈なのでお城の探索に行きませんか?」
「え? でも……」
私はお昼を運んできてくれた時の爺やさんとの会話を思い出してみた。
――それは今を去る事3時間程前の出来事。
****
「まあ~なんて豪華な食事なんでしょう!」
私は爺やさんを伴って運ばれてきた料理に目を輝かせていた。
「ええ、本当ですね~。これほど見事な料理はオーランド王国でも出た事がありませんね」
ミラージュも豪華な食事を前にすっかりご機嫌なのか、ニコニコしている。
私たちの前にはテーブル一杯に料理が並べられていた。シーフード料理やお肉料理、湯気の立つスープにカラフルサラダ。そして可愛らしい形のスイーツの数々……まるで夢の様だった。
「どうでしょう? お気に召されましたか?」
料理を運んできたメイド達が去った後、爺やさんは私たちに尋ねてきた。
「ええ、とっても気に入りました。ありがとうございます」
私は笑みを浮かべて爺やさんにお礼を述べた。
「フン。確かに見事なお料理ですね。私たちの為にこれほどの料理を用意して下さった事に免じてこれまでレベッカ様に働いてきた無礼の数々は帳消しにしてあげても良いかもしれませんね」
ミラージュはあくまで強気な姿勢を崩さないが、その顔は満足そうだった。
「さ、左様でございますか……。お褒め頂き光栄至極に存じます」
爺やさんの態度が明らかに私とミラージュとで接し方が違ってきた。どう見ても私に対してよりもミラージュに対する態度の方が腰を低くしている。どうやら爺やさんの中では完全に私とミラージュの上下関係が逆転してしまっているようだった。
「ところでミラージュ様、レベッカ様。お二方にお願いがございます」
「はい?」
ミラージュはチラリと爺やさんを見た。
「何でしょうか?」
「どうか…食事の終わった後もあまりこの部屋からお出にならないようにお願い致します」
「はぁ? 何故ですか!?」
途端に鋭い声を上げるミラージュ。すると爺やさんは明らかに肩をびくりと震わせながらも、健気? に口を開いた。
「い、いえ……実はこの……し、城は大変広く……そ、その複雑な造りをしておりますので、不用意に歩かれて道に迷われたら大変です。あいにく今夜の宴もありすので……」
「はぁ? 宴? レベッカ様は出席出来ない宴の事ですよね?」
ジロリとミラージュが爺やさんを睨みつけると小刻みに身体を震わせながら言葉を続ける。
「い、いえ。明日の結婚式の準備で誰もが忙しいので、お城の案内を……そ、その……出来ないので……」
「な、何ですって~!」
ああ! またミラージュの怒りが蓄積してきた。このままでは本性が……っ!
「わ、分かりました! 私たちは部屋から出ませんのでご安心下さい!」
私はミラージュが何か口にする前に素早く爺やさんに返事をしたのだった――
****
「ミラージュ。爺やさんに部屋から出ないと約束してしまったのに、大丈夫なのかしら?」
不安になってミラージュに尋ねた。
「大丈夫ですよ。どうせ爺やさんとアレックス王子に数人のメイド達しか私たちの顔を知らないのですから、ばれませんって。それにもう手遅れですよ。だって私たちは……」
「ええ、そうね。迷子になってしまったものね」
爺やさんの言いつけを破った私たちは、ものの見事に迷子になってしまっていた。
「まぁ、別にいいじゃありませんか。このままお城の中を散策してみましょう」
「ええ、そうね」
こうして私とミラージュのお城の散策が始まった――
私とミラージュは昼食後、特にすることも無かったので2人で部屋でゴロゴロして過ごしていた。
「退屈ですね……レベッカ様……」
ミラージュはレース編みをしながらポツリと呟く。
「ええ……本当にそうね……」
読みかけの本をパタンと閉じると、溜息をついた。
「やはりこんな扱いは納得出来ませんよ。運ばれてきたお食事は豪華で美味しかったのですが、食器を下げた後は放置ですよ? 放置っ! 明日は大切な結婚式があると言うのに、打ち合わせも無ければドレスの準備が出来ているのかも分からない。この分だと指輪だって用意してあるかどうか分かりませんよ!?」
何故か立ち上がるミラージュ。
「あら? ミラージュ。どうしたの? 急に立ち上がったりして」
「レベッカ様! 退屈なのでお城の探索に行きませんか?」
「え? でも……」
私はお昼を運んできてくれた時の爺やさんとの会話を思い出してみた。
――それは今を去る事3時間程前の出来事。
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「まあ~なんて豪華な食事なんでしょう!」
私は爺やさんを伴って運ばれてきた料理に目を輝かせていた。
「ええ、本当ですね~。これほど見事な料理はオーランド王国でも出た事がありませんね」
ミラージュも豪華な食事を前にすっかりご機嫌なのか、ニコニコしている。
私たちの前にはテーブル一杯に料理が並べられていた。シーフード料理やお肉料理、湯気の立つスープにカラフルサラダ。そして可愛らしい形のスイーツの数々……まるで夢の様だった。
「どうでしょう? お気に召されましたか?」
料理を運んできたメイド達が去った後、爺やさんは私たちに尋ねてきた。
「ええ、とっても気に入りました。ありがとうございます」
私は笑みを浮かべて爺やさんにお礼を述べた。
「フン。確かに見事なお料理ですね。私たちの為にこれほどの料理を用意して下さった事に免じてこれまでレベッカ様に働いてきた無礼の数々は帳消しにしてあげても良いかもしれませんね」
ミラージュはあくまで強気な姿勢を崩さないが、その顔は満足そうだった。
「さ、左様でございますか……。お褒め頂き光栄至極に存じます」
爺やさんの態度が明らかに私とミラージュとで接し方が違ってきた。どう見ても私に対してよりもミラージュに対する態度の方が腰を低くしている。どうやら爺やさんの中では完全に私とミラージュの上下関係が逆転してしまっているようだった。
「ところでミラージュ様、レベッカ様。お二方にお願いがございます」
「はい?」
ミラージュはチラリと爺やさんを見た。
「何でしょうか?」
「どうか…食事の終わった後もあまりこの部屋からお出にならないようにお願い致します」
「はぁ? 何故ですか!?」
途端に鋭い声を上げるミラージュ。すると爺やさんは明らかに肩をびくりと震わせながらも、健気? に口を開いた。
「い、いえ……実はこの……し、城は大変広く……そ、その複雑な造りをしておりますので、不用意に歩かれて道に迷われたら大変です。あいにく今夜の宴もありすので……」
「はぁ? 宴? レベッカ様は出席出来ない宴の事ですよね?」
ジロリとミラージュが爺やさんを睨みつけると小刻みに身体を震わせながら言葉を続ける。
「い、いえ。明日の結婚式の準備で誰もが忙しいので、お城の案内を……そ、その……出来ないので……」
「な、何ですって~!」
ああ! またミラージュの怒りが蓄積してきた。このままでは本性が……っ!
「わ、分かりました! 私たちは部屋から出ませんのでご安心下さい!」
私はミラージュが何か口にする前に素早く爺やさんに返事をしたのだった――
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「ミラージュ。爺やさんに部屋から出ないと約束してしまったのに、大丈夫なのかしら?」
不安になってミラージュに尋ねた。
「大丈夫ですよ。どうせ爺やさんとアレックス王子に数人のメイド達しか私たちの顔を知らないのですから、ばれませんって。それにもう手遅れですよ。だって私たちは……」
「ええ、そうね。迷子になってしまったものね」
爺やさんの言いつけを破った私たちは、ものの見事に迷子になってしまっていた。
「まぁ、別にいいじゃありませんか。このままお城の中を散策してみましょう」
「ええ、そうね」
こうして私とミラージュのお城の散策が始まった――