政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
7-11 愚かな2人の王子
「ええっ!? そ、そんな……あいつと僕はそもそも何の関係もないじゃないかっ!? どうして僕をあんな男と一緒くたにするんだい? 僕は君に何もしていないだろう?」
ランス王子は情けない声で私に訴えてくる。
「ええ、そうですね。果樹園の件では確かにお世話になった事はありますが……でも今、ランス王子の農園が栄えているのは誰のお陰ですか? 菜園の管理をしているのは? あの美味しいイチゴが食べられるようになったのは?」
「う、うん……レベッカ。君のお陰……だよ?」
「ええ、そうです。私のお陰です。それなのにランス王子。貴方は私に何をしてくれたでしょう? 少しでもあの男の愚行を正そうとしてくれた事はありましたか!? あのリーゼロッテが危険な人物だと知っていたんですよねぇ? だったら見張りの一つ位立ててくれても良かったのではないですか? それなのに何一つ手を打ってくれませんでしたよねっ!? 挙句の果てに私に結婚を申し込むなんて兄弟揃って本当に図々しいですねぇっ!?」
もうあのアレックス王子と似たような顔を見るだけで……例え半分とはいえ、同じ血が流れていると思えば思う程、ランス王子に対しても腹が立ってしようがない。
「そうですっ! その通りですっ! 最高ですっ! レベッカ様っ!」
ミラージュは拍手しながら私に声援を送る。
「そ、そこまで言わなくても……」
がっくりと肩を落とすランス王子はついに怒りの矛先をアレックス王子に向けた。
「おい! アレックスッ! 貴様のせいで僕はレベッカにフラれてしまっただろうっ!?」
そしてズカズカとアレックス王子に近づくと、両足が床に凍り付いて身動き取れない王子をいきなり拳で殴りつけた。
バキッ!
綺麗に右ストレートが決まるランス王子。
「フゴ~ッ!!」
アレックス王子はすさまじい目で睨み付けると、負けじとランス王子を殴りつける。
バキッ!
ランス王子の左頬に見事にヒット!
「く……お、お前……っ!」
よろけながらランス王子は再びアレックス王子を殴りつけた。そしてそこから始まる兄弟間の激しい殴り合い……。
「どうします? レベッカ様」
ミラージュは呆れた様に兄弟喧嘩を見つめている。
「そうね、放っておきましょう。私達には関係ないから」
「そうですね、私達には何にも関係無いですからね」
ミラージュは嬉しそうに笑い、鼻歌を歌いながら荷造りを再開した。
私は2人の殴り合いの様子をチラリと見た。口も利けない、両足は動かないアレックス王子はどう見ても不利だ。
その証拠にアレックス王子の顔の状態の方が酷いことになっている。だけど私は放って置いた。何故ならランス王子よりも憎むべき相手はアレックス王子だからだ。せいぜい2人で殴り合って共倒れになってくれればそれでよい。
「レベッカ様。荷造りは全て終わりましたね?」
ミラージュは山積みになったトランクケースを前に尋ねてきた。
「終わったわよ」
この中には私がこの城で支給された服が全て入っている。アクセサリーの類は何一つない。何故ならドケチなアレックス王子は一切用意してくれなかったからだ。少しでもあれば売ってお金の足しに出来たのに。
「今、台車を持ってきますね~」
ミラージュはウキウキしながら部屋を出て行く。
「ええ、お願いねー」
2人の王子の様子を見ると彼らはとっくに気絶して折り重なるように床の上に伸びていた。それにしても…ランス王子は情けない男だ。
圧倒的にアレックス王子よりも有利な状況にあったのに、床の上に伸びているとは……。
「全く愚かな王子達ね」
吐き捨てるように言ったその時。
「レベッカ様! 台車を持ってきましたよっ!」
ミラージュが大きな台車をガラガラと運んできた。
「ナイスよ! ミラージュ。さぁ、早速荷物を積みましょう!」
こうして私達は20個近いトランクケースを台車に積むと、気絶している2人の王子を残し、部屋を出ようとした。
その時、アレックス王子が目に入った。
せめてもの情け……アレックス王子の戒めだけは解いておいてあげよう。
指をパチンとならし、私は戒めを解いて上げた。
「さ、行きましょう、ミラージュ」
今度こそ私はミラージュと共に部屋を出た。
そして……ついにこの国は私の逆鱗に触れる事をしてしまう――
ランス王子は情けない声で私に訴えてくる。
「ええ、そうですね。果樹園の件では確かにお世話になった事はありますが……でも今、ランス王子の農園が栄えているのは誰のお陰ですか? 菜園の管理をしているのは? あの美味しいイチゴが食べられるようになったのは?」
「う、うん……レベッカ。君のお陰……だよ?」
「ええ、そうです。私のお陰です。それなのにランス王子。貴方は私に何をしてくれたでしょう? 少しでもあの男の愚行を正そうとしてくれた事はありましたか!? あのリーゼロッテが危険な人物だと知っていたんですよねぇ? だったら見張りの一つ位立ててくれても良かったのではないですか? それなのに何一つ手を打ってくれませんでしたよねっ!? 挙句の果てに私に結婚を申し込むなんて兄弟揃って本当に図々しいですねぇっ!?」
もうあのアレックス王子と似たような顔を見るだけで……例え半分とはいえ、同じ血が流れていると思えば思う程、ランス王子に対しても腹が立ってしようがない。
「そうですっ! その通りですっ! 最高ですっ! レベッカ様っ!」
ミラージュは拍手しながら私に声援を送る。
「そ、そこまで言わなくても……」
がっくりと肩を落とすランス王子はついに怒りの矛先をアレックス王子に向けた。
「おい! アレックスッ! 貴様のせいで僕はレベッカにフラれてしまっただろうっ!?」
そしてズカズカとアレックス王子に近づくと、両足が床に凍り付いて身動き取れない王子をいきなり拳で殴りつけた。
バキッ!
綺麗に右ストレートが決まるランス王子。
「フゴ~ッ!!」
アレックス王子はすさまじい目で睨み付けると、負けじとランス王子を殴りつける。
バキッ!
ランス王子の左頬に見事にヒット!
「く……お、お前……っ!」
よろけながらランス王子は再びアレックス王子を殴りつけた。そしてそこから始まる兄弟間の激しい殴り合い……。
「どうします? レベッカ様」
ミラージュは呆れた様に兄弟喧嘩を見つめている。
「そうね、放っておきましょう。私達には関係ないから」
「そうですね、私達には何にも関係無いですからね」
ミラージュは嬉しそうに笑い、鼻歌を歌いながら荷造りを再開した。
私は2人の殴り合いの様子をチラリと見た。口も利けない、両足は動かないアレックス王子はどう見ても不利だ。
その証拠にアレックス王子の顔の状態の方が酷いことになっている。だけど私は放って置いた。何故ならランス王子よりも憎むべき相手はアレックス王子だからだ。せいぜい2人で殴り合って共倒れになってくれればそれでよい。
「レベッカ様。荷造りは全て終わりましたね?」
ミラージュは山積みになったトランクケースを前に尋ねてきた。
「終わったわよ」
この中には私がこの城で支給された服が全て入っている。アクセサリーの類は何一つない。何故ならドケチなアレックス王子は一切用意してくれなかったからだ。少しでもあれば売ってお金の足しに出来たのに。
「今、台車を持ってきますね~」
ミラージュはウキウキしながら部屋を出て行く。
「ええ、お願いねー」
2人の王子の様子を見ると彼らはとっくに気絶して折り重なるように床の上に伸びていた。それにしても…ランス王子は情けない男だ。
圧倒的にアレックス王子よりも有利な状況にあったのに、床の上に伸びているとは……。
「全く愚かな王子達ね」
吐き捨てるように言ったその時。
「レベッカ様! 台車を持ってきましたよっ!」
ミラージュが大きな台車をガラガラと運んできた。
「ナイスよ! ミラージュ。さぁ、早速荷物を積みましょう!」
こうして私達は20個近いトランクケースを台車に積むと、気絶している2人の王子を残し、部屋を出ようとした。
その時、アレックス王子が目に入った。
せめてもの情け……アレックス王子の戒めだけは解いておいてあげよう。
指をパチンとならし、私は戒めを解いて上げた。
「さ、行きましょう、ミラージュ」
今度こそ私はミラージュと共に部屋を出た。
そして……ついにこの国は私の逆鱗に触れる事をしてしまう――