政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
1-14 ミラージュの交渉
「はい、着いたよ。こちらのお部屋で間違いないよね?」
男性はものの見事に私たちが仮住まい? している部屋が何所かをピタリと当てて連れて来てくれた。
「どこのどなたかは存じませんが、私たちをここまで連れて来て頂いてどうもありがとうございました」
私とミラージュは丁寧に頭を下げた。そして顔を上げたミラージュがまたしてもとんでもない事を口にした。
「ところで親切な貴方にお願いしたい事がございます。今夜の宴に私達は参加を許されていないのですが、何とか参加させて頂けないでしょうか?」
「ちょ、ちょっと! ミラージュッ! い、いいわよ、私は別に参加しなくても」
しかしミラージュは首を激しく左右に振る。
「いいえ! そう言う訳には参りません! 何としても参加しなくては私の気が収まりません!」
すると男性が首を傾げた。
「う~ん。多分君達2人の顔は殆ど誰にも知られていないから、ばれずに参加するのは不可能じゃないけど……でも何故参加しなくてはならないんだい?」
「そんなの決まっているではありませんか。あの大嘘つき王子が本当に恋人と別れるのかどうかを確認しないとならないからです」
ミラージュは鼻息を荒くしている。
「それじゃあさ、もしアレックス王子が恋人と別れなかった場合はどうするんだい?」
男性は何所か楽しそうに見える。まるでミラージュを煽って、その反応を楽しんでいるようだ。
「そんな事は決まりきっています! アレックス王子をぶちのめすに決まっているじゃありませんか!」
ミラージュが指を再びボキボキと鳴らす。
「きゃあ! お願いだからミラージュ、指をボキボキ鳴らすのはやめて頂戴!」
「ハハハハ……本当に君たちは面白いねぇ……よし、分ったよ。僕が何とか宴に出られるように計らってあげるよ。ところで夜会ドレスは持ってきているのかな? 君たちの今着ている服は……その……あまり身分の高い女性たちが着るような服とは少し言い難いからね」
「そ、それは……」
その言葉を聞いて顔が赤くなってしまった。うう……た、確かに今私が着ている服は町娘と変わらないようなワンピースだ。きっと今の私の姿を見ても正体を知らない人達から見ればとても王女には見えないだろう。
思わず真っ赤になって頷くと、ミラージュが男性に怒りだした。
「まあ……! それはレベッカ様を侮辱しているのですか? 貴方はご存じないのでしょう? オーランド王国でレベッカ様がどれだけ理不尽な扱いを受けていたかを! 陛下はこちらの国から頂いた支度金を全てご自身と上の王女様達に分け与え、レベッカ様には少しも分けて下さらなかったのですよ? ドレスだっておさがりすら分けて下さらない。レベッカ様はワンピースしか買って頂けなかったのですから!」
「ええっ!? それはあまりにも酷い話だね! でも安心していいよ。アレックス王子と結婚すれば、お金に不自由する事は無くなるからね」
「その言葉……嘘ではありませんよね?」
ミラージュは腕組みすると念を押した。
「ああ、大丈夫だよ。それじゃ宴は夜の19時だから、それまでに君達2人の為にドレスを準備してもらうように頼んでおくからね?」
「え? ほ、本当ですか……?」
「本当だよ。それじゃ迎えに行くまで部屋で休んでいるといいよ。また後でね」
男性はにこやかに手を振ると、去って行った。
「良かったですね。レベッカ様」
「ええ、本当に。親切なお方に出会えて良かったわ」
しかし……私達がこの宴に参加する事は、無かった――
男性はものの見事に私たちが仮住まい? している部屋が何所かをピタリと当てて連れて来てくれた。
「どこのどなたかは存じませんが、私たちをここまで連れて来て頂いてどうもありがとうございました」
私とミラージュは丁寧に頭を下げた。そして顔を上げたミラージュがまたしてもとんでもない事を口にした。
「ところで親切な貴方にお願いしたい事がございます。今夜の宴に私達は参加を許されていないのですが、何とか参加させて頂けないでしょうか?」
「ちょ、ちょっと! ミラージュッ! い、いいわよ、私は別に参加しなくても」
しかしミラージュは首を激しく左右に振る。
「いいえ! そう言う訳には参りません! 何としても参加しなくては私の気が収まりません!」
すると男性が首を傾げた。
「う~ん。多分君達2人の顔は殆ど誰にも知られていないから、ばれずに参加するのは不可能じゃないけど……でも何故参加しなくてはならないんだい?」
「そんなの決まっているではありませんか。あの大嘘つき王子が本当に恋人と別れるのかどうかを確認しないとならないからです」
ミラージュは鼻息を荒くしている。
「それじゃあさ、もしアレックス王子が恋人と別れなかった場合はどうするんだい?」
男性は何所か楽しそうに見える。まるでミラージュを煽って、その反応を楽しんでいるようだ。
「そんな事は決まりきっています! アレックス王子をぶちのめすに決まっているじゃありませんか!」
ミラージュが指を再びボキボキと鳴らす。
「きゃあ! お願いだからミラージュ、指をボキボキ鳴らすのはやめて頂戴!」
「ハハハハ……本当に君たちは面白いねぇ……よし、分ったよ。僕が何とか宴に出られるように計らってあげるよ。ところで夜会ドレスは持ってきているのかな? 君たちの今着ている服は……その……あまり身分の高い女性たちが着るような服とは少し言い難いからね」
「そ、それは……」
その言葉を聞いて顔が赤くなってしまった。うう……た、確かに今私が着ている服は町娘と変わらないようなワンピースだ。きっと今の私の姿を見ても正体を知らない人達から見ればとても王女には見えないだろう。
思わず真っ赤になって頷くと、ミラージュが男性に怒りだした。
「まあ……! それはレベッカ様を侮辱しているのですか? 貴方はご存じないのでしょう? オーランド王国でレベッカ様がどれだけ理不尽な扱いを受けていたかを! 陛下はこちらの国から頂いた支度金を全てご自身と上の王女様達に分け与え、レベッカ様には少しも分けて下さらなかったのですよ? ドレスだっておさがりすら分けて下さらない。レベッカ様はワンピースしか買って頂けなかったのですから!」
「ええっ!? それはあまりにも酷い話だね! でも安心していいよ。アレックス王子と結婚すれば、お金に不自由する事は無くなるからね」
「その言葉……嘘ではありませんよね?」
ミラージュは腕組みすると念を押した。
「ああ、大丈夫だよ。それじゃ宴は夜の19時だから、それまでに君達2人の為にドレスを準備してもらうように頼んでおくからね?」
「え? ほ、本当ですか……?」
「本当だよ。それじゃ迎えに行くまで部屋で休んでいるといいよ。また後でね」
男性はにこやかに手を振ると、去って行った。
「良かったですね。レベッカ様」
「ええ、本当に。親切なお方に出会えて良かったわ」
しかし……私達がこの宴に参加する事は、無かった――