政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
2-9 憧れの部屋
「レベッカ様、新しいお部屋をご用意致しましたので、早速案内させて頂きます」
メイド長は恭しく私に頭を下げてきた。するとそこへミラージュが問いかけた。
「メイド長、勿論私のお部屋もありますよね?」
「はい、勿論でございます。レベッカ様と同じ階にお部屋をご用意させて頂きました」
「まあ……貴女は何て気の利くメイド長なのかしら。きっと今に貴女にも素晴らしい出来事が待っていますよ?」
私はにっこり笑みを浮かべるとメイド長は涙目になった。
「うっうっ……本当にレベッカ様は何て心の広いお方なのでしょう……我が国は王女様に非礼な行為ばかり行って来たのに、それを咎めることも無く、泣き叫んだり暴れたりすることも無く受け入れて下さって……本当にありがとうございます……」
そしてとうとう泣き崩れてしまった。
「うっうううっううううっ……」
「あ、あの~……もう十分ですから。そろそろ私達をお部屋へ案内して頂けないかしら……?」
「そうですよ、泣くのでしたら私達を部屋に案内してからにして下さい」
ミラージュは容赦ない。
「は、はい。た、ただいま。で、ではこちらへどうぞ」
そして私達はメイド長に連れられて、部屋へと案内された。
****
「レベッカ様とミラージュ様のお部屋はこの城の中で一番日当たりの良い南の塔にご用意させて頂きました。南塔には国王陛下のお部屋にランス王子様、そして当然の如く、アレックス王子様のお部屋もございます。レベッカ様はアレックス様と同じ3階のお部屋をご用意させて頂きました」
説明をしながら歩くメイド長さんの後ろに付いて歩く私とミラージュ。それにしても何て広い城なのだろう。これでは当分誰かの案内なしにはむやみやたらと歩き回ることが出来ない。
目の前に広がる広々とした廊下。天井近くにある大きな窓からは十分すぎる位に太陽光が取り入れられ、花瓶に生けられた見事な花々も元気よく咲き乱れている。廊下に並べられた見事な彫刻や調度品を見るだけで、いかにこの国が裕福であるかを物語っているようであった。
「本当に見れば見る程立派なお城よねぇ……」
ホウとため息をつくとその直後、メイド長はピタリと足を止めた。
「こちらがレベッカ様のお部屋でございます」
見るとそこは真っ白なドアに金色のドアノブが付いている。そしてドアプレートには『レベッカ様のお部屋』と記されている。
「さあ……扉を開けますよ」
メイド長は言うとドアノブに手を掛けた。
カチャリ……
扉が開かれると、眼前にまず飛び込んできたのはとてつもなく広い部屋だった。部屋の窓は憧れだったアーチ型の掃き出し窓。風に揺れるレースのカーテン。窓から見える揺れる緑の木々……。
部屋のカーペットは淡いピンク色で窓の傍に置かれた大きな天蓋付きベッドは綺麗にメイキングされている。部屋に配置されたソファセットやドレッサー。
そのどれもが今まで一度も私が与えられなかったものばかりだった。
「まあ! 素敵なお部屋ですねっ!」
ミラージュも興奮で顔が真っ赤になっている。
「お気に召して頂けて光栄です。少しお休みされますか?」
メイド長の言葉に私は大きくうなずいた。
「ええ! 30分ほど、この部屋を堪能したいわ」
「はい、承知致しました。それでは30分後、伺いますね。ミラージュ様のお部屋も後程案内させて頂きます」
そしてメイド長は頭を下げて退出した。
「それにしてもまさかオーランド王国の様に小さな国の第4王女の私がこの国に嫁いでくることになるなんて思いもしなかったわ……」
ソファに座ると私はミラージュに語り掛けた。すると隣に座ったミラージュが神妙な顔をした。
「レベッカ様、ひょっとするとこの国はレベッカ様の秘密を知っているのではないでしょうか? それでレベッカ様を望まれたのではありませんか?」
「え? ま、まさか……。そんなはずは無いでしょう? だってお父様だって知らないはずなのに?」
「そうですか……でもそろそろオーランド王国では異変が起こっていると思いますよ? でも、はっきり言ってあの国に住む人々は愚か者ばかりですから気づいた時にはもう手遅れになっているでしょうね」
「ええ、そうね」
だけど、私はもうあの国とは縁が切れたのだ。それに常に蔑ろにされて育ってきたので、オーランド王国が滅びようが、もう私には関係無い事。
「この国の人々が皆私やミラージュにとって良い人達ばかりなら、ますますこの国は栄えるわね」
しかし、この後更なる受難が待ち受けているとは、この時の私には知る由も無かった――
メイド長は恭しく私に頭を下げてきた。するとそこへミラージュが問いかけた。
「メイド長、勿論私のお部屋もありますよね?」
「はい、勿論でございます。レベッカ様と同じ階にお部屋をご用意させて頂きました」
「まあ……貴女は何て気の利くメイド長なのかしら。きっと今に貴女にも素晴らしい出来事が待っていますよ?」
私はにっこり笑みを浮かべるとメイド長は涙目になった。
「うっうっ……本当にレベッカ様は何て心の広いお方なのでしょう……我が国は王女様に非礼な行為ばかり行って来たのに、それを咎めることも無く、泣き叫んだり暴れたりすることも無く受け入れて下さって……本当にありがとうございます……」
そしてとうとう泣き崩れてしまった。
「うっうううっううううっ……」
「あ、あの~……もう十分ですから。そろそろ私達をお部屋へ案内して頂けないかしら……?」
「そうですよ、泣くのでしたら私達を部屋に案内してからにして下さい」
ミラージュは容赦ない。
「は、はい。た、ただいま。で、ではこちらへどうぞ」
そして私達はメイド長に連れられて、部屋へと案内された。
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「レベッカ様とミラージュ様のお部屋はこの城の中で一番日当たりの良い南の塔にご用意させて頂きました。南塔には国王陛下のお部屋にランス王子様、そして当然の如く、アレックス王子様のお部屋もございます。レベッカ様はアレックス様と同じ3階のお部屋をご用意させて頂きました」
説明をしながら歩くメイド長さんの後ろに付いて歩く私とミラージュ。それにしても何て広い城なのだろう。これでは当分誰かの案内なしにはむやみやたらと歩き回ることが出来ない。
目の前に広がる広々とした廊下。天井近くにある大きな窓からは十分すぎる位に太陽光が取り入れられ、花瓶に生けられた見事な花々も元気よく咲き乱れている。廊下に並べられた見事な彫刻や調度品を見るだけで、いかにこの国が裕福であるかを物語っているようであった。
「本当に見れば見る程立派なお城よねぇ……」
ホウとため息をつくとその直後、メイド長はピタリと足を止めた。
「こちらがレベッカ様のお部屋でございます」
見るとそこは真っ白なドアに金色のドアノブが付いている。そしてドアプレートには『レベッカ様のお部屋』と記されている。
「さあ……扉を開けますよ」
メイド長は言うとドアノブに手を掛けた。
カチャリ……
扉が開かれると、眼前にまず飛び込んできたのはとてつもなく広い部屋だった。部屋の窓は憧れだったアーチ型の掃き出し窓。風に揺れるレースのカーテン。窓から見える揺れる緑の木々……。
部屋のカーペットは淡いピンク色で窓の傍に置かれた大きな天蓋付きベッドは綺麗にメイキングされている。部屋に配置されたソファセットやドレッサー。
そのどれもが今まで一度も私が与えられなかったものばかりだった。
「まあ! 素敵なお部屋ですねっ!」
ミラージュも興奮で顔が真っ赤になっている。
「お気に召して頂けて光栄です。少しお休みされますか?」
メイド長の言葉に私は大きくうなずいた。
「ええ! 30分ほど、この部屋を堪能したいわ」
「はい、承知致しました。それでは30分後、伺いますね。ミラージュ様のお部屋も後程案内させて頂きます」
そしてメイド長は頭を下げて退出した。
「それにしてもまさかオーランド王国の様に小さな国の第4王女の私がこの国に嫁いでくることになるなんて思いもしなかったわ……」
ソファに座ると私はミラージュに語り掛けた。すると隣に座ったミラージュが神妙な顔をした。
「レベッカ様、ひょっとするとこの国はレベッカ様の秘密を知っているのではないでしょうか? それでレベッカ様を望まれたのではありませんか?」
「え? ま、まさか……。そんなはずは無いでしょう? だってお父様だって知らないはずなのに?」
「そうですか……でもそろそろオーランド王国では異変が起こっていると思いますよ? でも、はっきり言ってあの国に住む人々は愚か者ばかりですから気づいた時にはもう手遅れになっているでしょうね」
「ええ、そうね」
だけど、私はもうあの国とは縁が切れたのだ。それに常に蔑ろにされて育ってきたので、オーランド王国が滅びようが、もう私には関係無い事。
「この国の人々が皆私やミラージュにとって良い人達ばかりなら、ますますこの国は栄えるわね」
しかし、この後更なる受難が待ち受けているとは、この時の私には知る由も無かった――