政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
2-16 ビビアンの夜の指南?
「しっかり洗ってきて下さいね~」
バスルームの向こう側でメイドの声が聞こえてくる。
「は、はいぃっ!」
思わず声が裏返りながら私は返事をした。メイドに何度も身体と髪を洗う手伝いをしますと言われたが、断固として私は拒否した。
だって今までの人生、私は王女という立場にありながら王宮に住むことを許されずに1人敷地にある離れのレンガ造りの家に住まわされていたので、何もかも全ての準備を自分でやってきた。今更誰かに身体や髪を洗ってもらうなんて恥ずかしくてたまらない。
「はぁ~それにしても……お嫁入りの時、オーランド国まで迎えに来てもくれず、国へ着いても迎えの人は爺やさんだけ。おまけに1人ぼっちでの結婚式の真っ最中に肝心のアレックス王子は別の女性と情事の真っ最中……」
よくよく考えてみたら……いや、考えなくても理不尽過ぎる。どうして私があんな王子の為に操を捧げなくてはならないのだろうか?
「でも……まぁ仕方が無いかしら? 結婚すれば誰もが避けて通れない道なのだから。事の最中、天井の模様でも眺めていて……さっさと終わらせて貰いましょう。はぁ〜……でも、あのアレックス王子とするのか……何だかガッツイているようでイヤだなぁ」
ため息をつきながら一応? 私は念入りに身体を洗った――
****
――ガチャリ
バスルームのドアを開けると、先ほどのメイドでは無く、ビビアンがどこからともなく椅子を持ってきて廊下で待機していた。
「あら? ようやく湯あみが終わったんですね。そんな事しても無駄なのに」
「え? 今最後は何て言ったの?」
「あら…いえ、何でもありませんわ。ホホホホホ……」
「さて、ではレベッカ様。一度お部屋に戻りましょうか? それにしても何ですか? その子供っぽいお召し物は」
青白い月明りに照らされた長い廊下を前に立って歩くビビアンが振り返る。
「え……? このネグリジェ、おかしいかしら?」
真っ白で裾と袖口にフリルの付いた可愛らしいネグリジェ。私は気に入ってるんだけどな……。
するとビビアンは再び前を向いて進みながら話を続ける。
「ええ、そうですよ。良いですか? 殿方をその気にさせるにはそんなネグリジェでは駄目です。まず、選ぶ素材は肌が透けて見えるような薄地に、布地は少なければ少ない程効果的です。勿論前開きで、被り物は絶対着用してはいけません。そしてこれが重要ですよ? ナイトウェアは当然紐で結ぶタイプ。当然これはすぐに前の合わせを解く事が出来るので殿方にとっては何かと都合が良いですからね……」
等々…ナイトウェアのうんちくを語っているけれども、私は外の月明りに照らされたお城の内部の神秘的な美しさに目を囚われて、話の半分も聞いてはいなかった。
「では、レベッカ様。ご自身のお部屋でしっかりお待ち下さいね。直にアレックス王子様がいらっしゃると思うので……良いですか? 絶対に寝ないで待つのですよ?」
寝ないで待つ……何故かそこだけを強調するビビアン。
「ええ、分かったわ。アレックス王子を寝ずに待てばよいのよね?」
「はい、そうです。私は王子がいらっしゃるまでここで一緒に待たせて頂きます」
え? 何でビビアンがここで一緒に待つの? 疑問を投げかけるより早くビビアンは寝室の棚からナイトキャップ用のアルコールとグラスを取り出し、開栓した。
「あの……そのお酒は……」
私のなんですけど…と言う前に、ビビアンはグラスに注ぎこむ。
トクトクトク……
そしてグラスに琥珀色のアルコールが注がれると、うっとりとした目つきに代わるビビアン。
「フフフ……これぞ極上の色……さぞかし高級なお酒でしょうね……」
そしてゴクリと白い喉を鳴らして一気飲みしてしまった。
「何て大胆な……」
私はビビアンのあまりの図々しさに呆れを通り越して感心してしまった。
「ねえ……レベッカ様」
「はい、何でしょう?」
ビビアンはしどけない恰好でカウチソファに寝転がった。
「貴女……男性の事はご存じなのかしら?」
「は?」
言ってる意味が分からなくて首を傾げる。すると……。
「オーホッホッホッ…!」
突然の高笑いに思わずビクリとなってしまった。ま、まさか……もう酔ってしまったのだろうか?
「ビビアン大丈夫? お酒に酔ってしまったのかしら?」
「レベッカ様……本当に貴女はネンネなのねぇ……?」
「はい?」
ねんね……ねんね……? どういう意味だろう?
「あの、それってどういう意味かしら……?」
しかし、ビビアンは質問に答えず立ち上がった。
「随分遅いですね……よろしい、私が直々にアレックス王子を呼んできましょう! レベッカ様はこのまま寝ずに待っているのですよ?」
「は、はぁ……」
私はベッドにチョコンと座ると返事をした。
「では、行って参りますっ!」
バアアアンッ!
盛大な音を立てて扉を開けると、ビビアンは部屋を出て行き……そのまま朝になっても部屋に戻って来る事は無かった――
バスルームの向こう側でメイドの声が聞こえてくる。
「は、はいぃっ!」
思わず声が裏返りながら私は返事をした。メイドに何度も身体と髪を洗う手伝いをしますと言われたが、断固として私は拒否した。
だって今までの人生、私は王女という立場にありながら王宮に住むことを許されずに1人敷地にある離れのレンガ造りの家に住まわされていたので、何もかも全ての準備を自分でやってきた。今更誰かに身体や髪を洗ってもらうなんて恥ずかしくてたまらない。
「はぁ~それにしても……お嫁入りの時、オーランド国まで迎えに来てもくれず、国へ着いても迎えの人は爺やさんだけ。おまけに1人ぼっちでの結婚式の真っ最中に肝心のアレックス王子は別の女性と情事の真っ最中……」
よくよく考えてみたら……いや、考えなくても理不尽過ぎる。どうして私があんな王子の為に操を捧げなくてはならないのだろうか?
「でも……まぁ仕方が無いかしら? 結婚すれば誰もが避けて通れない道なのだから。事の最中、天井の模様でも眺めていて……さっさと終わらせて貰いましょう。はぁ〜……でも、あのアレックス王子とするのか……何だかガッツイているようでイヤだなぁ」
ため息をつきながら一応? 私は念入りに身体を洗った――
****
――ガチャリ
バスルームのドアを開けると、先ほどのメイドでは無く、ビビアンがどこからともなく椅子を持ってきて廊下で待機していた。
「あら? ようやく湯あみが終わったんですね。そんな事しても無駄なのに」
「え? 今最後は何て言ったの?」
「あら…いえ、何でもありませんわ。ホホホホホ……」
「さて、ではレベッカ様。一度お部屋に戻りましょうか? それにしても何ですか? その子供っぽいお召し物は」
青白い月明りに照らされた長い廊下を前に立って歩くビビアンが振り返る。
「え……? このネグリジェ、おかしいかしら?」
真っ白で裾と袖口にフリルの付いた可愛らしいネグリジェ。私は気に入ってるんだけどな……。
するとビビアンは再び前を向いて進みながら話を続ける。
「ええ、そうですよ。良いですか? 殿方をその気にさせるにはそんなネグリジェでは駄目です。まず、選ぶ素材は肌が透けて見えるような薄地に、布地は少なければ少ない程効果的です。勿論前開きで、被り物は絶対着用してはいけません。そしてこれが重要ですよ? ナイトウェアは当然紐で結ぶタイプ。当然これはすぐに前の合わせを解く事が出来るので殿方にとっては何かと都合が良いですからね……」
等々…ナイトウェアのうんちくを語っているけれども、私は外の月明りに照らされたお城の内部の神秘的な美しさに目を囚われて、話の半分も聞いてはいなかった。
「では、レベッカ様。ご自身のお部屋でしっかりお待ち下さいね。直にアレックス王子様がいらっしゃると思うので……良いですか? 絶対に寝ないで待つのですよ?」
寝ないで待つ……何故かそこだけを強調するビビアン。
「ええ、分かったわ。アレックス王子を寝ずに待てばよいのよね?」
「はい、そうです。私は王子がいらっしゃるまでここで一緒に待たせて頂きます」
え? 何でビビアンがここで一緒に待つの? 疑問を投げかけるより早くビビアンは寝室の棚からナイトキャップ用のアルコールとグラスを取り出し、開栓した。
「あの……そのお酒は……」
私のなんですけど…と言う前に、ビビアンはグラスに注ぎこむ。
トクトクトク……
そしてグラスに琥珀色のアルコールが注がれると、うっとりとした目つきに代わるビビアン。
「フフフ……これぞ極上の色……さぞかし高級なお酒でしょうね……」
そしてゴクリと白い喉を鳴らして一気飲みしてしまった。
「何て大胆な……」
私はビビアンのあまりの図々しさに呆れを通り越して感心してしまった。
「ねえ……レベッカ様」
「はい、何でしょう?」
ビビアンはしどけない恰好でカウチソファに寝転がった。
「貴女……男性の事はご存じなのかしら?」
「は?」
言ってる意味が分からなくて首を傾げる。すると……。
「オーホッホッホッ…!」
突然の高笑いに思わずビクリとなってしまった。ま、まさか……もう酔ってしまったのだろうか?
「ビビアン大丈夫? お酒に酔ってしまったのかしら?」
「レベッカ様……本当に貴女はネンネなのねぇ……?」
「はい?」
ねんね……ねんね……? どういう意味だろう?
「あの、それってどういう意味かしら……?」
しかし、ビビアンは質問に答えず立ち上がった。
「随分遅いですね……よろしい、私が直々にアレックス王子を呼んできましょう! レベッカ様はこのまま寝ずに待っているのですよ?」
「は、はぁ……」
私はベッドにチョコンと座ると返事をした。
「では、行って参りますっ!」
バアアアンッ!
盛大な音を立てて扉を開けると、ビビアンは部屋を出て行き……そのまま朝になっても部屋に戻って来る事は無かった――