政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
2-20 愛人追放?
「ええっ!? ミ、ミラージュッ! 貴女……一体何をしているの!?」
室内にワゴンを押して入ってきたミラージュと、その背後には口に白い布でさるぐつわをされ、両手を前で紐によって拘束されているビビアンが腰紐でワゴンに括り付けられた状態で入ってきた。
「ええ。このメイドはレベッカ様のお食事の乗ったワゴンを持ったまま、すぐそこの廊下で親しげな様子で若いフットマンと油を売っていたのでこうして引っ立てて連れてきたのです」
ミラージュはしれっと答え、ビビアンは口をふさがれた状態でモガモガと何やらうなっている。
「で、でもさすがにこれはやり過ぎじゃないかしら?」
冷や汗を垂らしながら尋ねた。ミラージュは知らないから。
ビビアンがアレックス王子の愛人だと言う事を。もし自分の大切な愛人が私達? によって酷い目に遭わされた事を知れば、どんな怒りを買うことになるか……。その事を想像するだけで私は身震いならぬ武者震いを感じてしまう。
そのミラージュはワゴンの料理を手早くテーブルに並べながら憤慨している。
「何をおっしゃっているのですかレベッカ様。この女はよりにもよってすぐそこの! お部屋の前でフットマンと抱き合っていたのですよっ!? 何ならその男もここに連れてまいりましょうか?」
ミラージュは怒りが収まらないのか、プンプンしながら手を休めることなく、ビビアンを睨みつけた。
え? ちょっと待って。ビビアンがアレックス王子以外の男性と抱き合っていた……? 私はてっきりアレックス王子とビビアンは恋人同士かと思っていたけど実はそうじゃなかったのだろうか? 単なる火遊び程度の仲だったとか?
「ウ~ッ! ウ~ッ!」
ビビアンはまだうなってもがいている。
「まあまあ落ち着いて、ミラージュ。とりあえずお腹が空いているからお食事にしましょう。ビビアンの拘束も解いてあげてくれる?」
「はぁ……まあ仕方がありませんね。他ならぬレベッカ様のお願いでしたら」
全ての料理を並べ終えたミラージュは溜息をつくとビビアンの背後に回り、さるぐつわを外した。
すると……。
「ちょっと! 何て事をしてくれるのよ!? こんな事をしてただで済むと思っているわけ!?」
未だに両手を拘束されたままのビビアンがミラージュに食ってかかる。
「さて、食べましょう」
とりあえずミラージュにビビアンの事は任せて椅子に座ると私は食事を摂る事にした。テーブルの上には若干ぬるくなってしまった料理が並んでいるけれども、オーランド王国に住んでいたころの私は、もっと冷めてしまった料理ばかり口にしていたので、少しも気に障るものでは無かった。まずは目の前のビーフシチューをパクリ、うん。お肉……柔らかい!
そして私のテーブルの前では2人の女の口論バトル? が繰り広げられている。
「はぁ? ただで済む……? 一体どの口がそんな事を言うのです? ただのメイド風情が侍女に歯向かえると思っているのですか!」
ミラージュは未だビビアンの腕の拘束を解いていない。
うん、このムニエルはハーブが効いてとても美味しい。
「貴女こそ、この私が誰か分かっていないようね? 私はね……メイドはメイドでもただのメイドじゃないのよ? アレックス王子に選ばれたメイドなのだからっ! 特別なメイドなのよっ!」
ビビアンは5回もメイドを連呼した。それにしてもこのテーブルパン、甘みがあって癖になりそう。
「はぁ? どんな特別なメイドだと言うの!? 仰ってみなさいっ!」
「ええ! なら教えてあげる! 私とアレックス王子はねぇ……男女の仲なのよっ!」
勝ち誇ったように言うビビアンに、そして固まるミラージュ。
あ~あ……ついにビビアン自ら暴露してしまうなんて……。
私はミートパイを口に入れると、その後の展開を見守る事にした。
「な、な、な、何ですって~っ!! あ、貴女……よくも仮にもアレックス王子様の妻であるレベッカ様の前で!」
ミラージュは地団太を踏みながら悔し気に叫ぶ。
「う、訴えてやるわ! メイド長と侍女長に! あ、貴女なんかクビよっ! ク・ビッ!」
さて、ビビアンはどう出るのだろう? 紅茶を飲んでビビアンの出方を見る私。
「フンッ! 誰がよそ者の貴女の言う事なんか聞くと思ってるの? 誰も信じるはずないでしょう!?」
ビビアンは腕組みするとそっぽを向いた。おおっ! すごい! ここまで来て開き直った!
「な、何ですって……! こ、この悪女めっ!」
はっ……いけない、これ以上ミラージュを興奮させては……ほ、本性が……!
こうなったら誰か人を呼んで現場を目撃してもらわなければ……。例えばメイド長や侍女長に……。
そう思った矢先。
「失礼致しますっ! 何事ですかっ!!」
バンッ!
扉が突如大きく開け放たれ、メイド長と侍女長? らしき人物が部屋の中に入ってきた。そしてその背後には若いフットマンがいる。
「え……? な、何故あんたがここにいるのよ?」
ビビアンは震えながらフットマンを見た。するとフットマンは項垂れた。
「ごめん……何だか突然激しい罪悪感に襲われて……それでふとメイド長と侍女長の事が頭に浮かんだんだ。それで呼んでここに連れてきたら……き、君は王子とも身体の関係があったんだね?」
「!」
途端にビビアンの顔が真っ青になり、ヘナヘナと床に崩れ落ちた。
「お前は誰ですか?」
突然メイド長はビビアンに尋ねる。
しかしビビアンは返事をしない。
「お前のようなメイドを雇っている覚えはありません。即刻出てお行きなさい。王子の口利きか何か知りませんが、私の方から王子には報告しておきます」
侍女長が冷たく言い放つと、ビビアンはがっくりと項垂れた――
室内にワゴンを押して入ってきたミラージュと、その背後には口に白い布でさるぐつわをされ、両手を前で紐によって拘束されているビビアンが腰紐でワゴンに括り付けられた状態で入ってきた。
「ええ。このメイドはレベッカ様のお食事の乗ったワゴンを持ったまま、すぐそこの廊下で親しげな様子で若いフットマンと油を売っていたのでこうして引っ立てて連れてきたのです」
ミラージュはしれっと答え、ビビアンは口をふさがれた状態でモガモガと何やらうなっている。
「で、でもさすがにこれはやり過ぎじゃないかしら?」
冷や汗を垂らしながら尋ねた。ミラージュは知らないから。
ビビアンがアレックス王子の愛人だと言う事を。もし自分の大切な愛人が私達? によって酷い目に遭わされた事を知れば、どんな怒りを買うことになるか……。その事を想像するだけで私は身震いならぬ武者震いを感じてしまう。
そのミラージュはワゴンの料理を手早くテーブルに並べながら憤慨している。
「何をおっしゃっているのですかレベッカ様。この女はよりにもよってすぐそこの! お部屋の前でフットマンと抱き合っていたのですよっ!? 何ならその男もここに連れてまいりましょうか?」
ミラージュは怒りが収まらないのか、プンプンしながら手を休めることなく、ビビアンを睨みつけた。
え? ちょっと待って。ビビアンがアレックス王子以外の男性と抱き合っていた……? 私はてっきりアレックス王子とビビアンは恋人同士かと思っていたけど実はそうじゃなかったのだろうか? 単なる火遊び程度の仲だったとか?
「ウ~ッ! ウ~ッ!」
ビビアンはまだうなってもがいている。
「まあまあ落ち着いて、ミラージュ。とりあえずお腹が空いているからお食事にしましょう。ビビアンの拘束も解いてあげてくれる?」
「はぁ……まあ仕方がありませんね。他ならぬレベッカ様のお願いでしたら」
全ての料理を並べ終えたミラージュは溜息をつくとビビアンの背後に回り、さるぐつわを外した。
すると……。
「ちょっと! 何て事をしてくれるのよ!? こんな事をしてただで済むと思っているわけ!?」
未だに両手を拘束されたままのビビアンがミラージュに食ってかかる。
「さて、食べましょう」
とりあえずミラージュにビビアンの事は任せて椅子に座ると私は食事を摂る事にした。テーブルの上には若干ぬるくなってしまった料理が並んでいるけれども、オーランド王国に住んでいたころの私は、もっと冷めてしまった料理ばかり口にしていたので、少しも気に障るものでは無かった。まずは目の前のビーフシチューをパクリ、うん。お肉……柔らかい!
そして私のテーブルの前では2人の女の口論バトル? が繰り広げられている。
「はぁ? ただで済む……? 一体どの口がそんな事を言うのです? ただのメイド風情が侍女に歯向かえると思っているのですか!」
ミラージュは未だビビアンの腕の拘束を解いていない。
うん、このムニエルはハーブが効いてとても美味しい。
「貴女こそ、この私が誰か分かっていないようね? 私はね……メイドはメイドでもただのメイドじゃないのよ? アレックス王子に選ばれたメイドなのだからっ! 特別なメイドなのよっ!」
ビビアンは5回もメイドを連呼した。それにしてもこのテーブルパン、甘みがあって癖になりそう。
「はぁ? どんな特別なメイドだと言うの!? 仰ってみなさいっ!」
「ええ! なら教えてあげる! 私とアレックス王子はねぇ……男女の仲なのよっ!」
勝ち誇ったように言うビビアンに、そして固まるミラージュ。
あ~あ……ついにビビアン自ら暴露してしまうなんて……。
私はミートパイを口に入れると、その後の展開を見守る事にした。
「な、な、な、何ですって~っ!! あ、貴女……よくも仮にもアレックス王子様の妻であるレベッカ様の前で!」
ミラージュは地団太を踏みながら悔し気に叫ぶ。
「う、訴えてやるわ! メイド長と侍女長に! あ、貴女なんかクビよっ! ク・ビッ!」
さて、ビビアンはどう出るのだろう? 紅茶を飲んでビビアンの出方を見る私。
「フンッ! 誰がよそ者の貴女の言う事なんか聞くと思ってるの? 誰も信じるはずないでしょう!?」
ビビアンは腕組みするとそっぽを向いた。おおっ! すごい! ここまで来て開き直った!
「な、何ですって……! こ、この悪女めっ!」
はっ……いけない、これ以上ミラージュを興奮させては……ほ、本性が……!
こうなったら誰か人を呼んで現場を目撃してもらわなければ……。例えばメイド長や侍女長に……。
そう思った矢先。
「失礼致しますっ! 何事ですかっ!!」
バンッ!
扉が突如大きく開け放たれ、メイド長と侍女長? らしき人物が部屋の中に入ってきた。そしてその背後には若いフットマンがいる。
「え……? な、何故あんたがここにいるのよ?」
ビビアンは震えながらフットマンを見た。するとフットマンは項垂れた。
「ごめん……何だか突然激しい罪悪感に襲われて……それでふとメイド長と侍女長の事が頭に浮かんだんだ。それで呼んでここに連れてきたら……き、君は王子とも身体の関係があったんだね?」
「!」
途端にビビアンの顔が真っ青になり、ヘナヘナと床に崩れ落ちた。
「お前は誰ですか?」
突然メイド長はビビアンに尋ねる。
しかしビビアンは返事をしない。
「お前のようなメイドを雇っている覚えはありません。即刻出てお行きなさい。王子の口利きか何か知りませんが、私の方から王子には報告しておきます」
侍女長が冷たく言い放つと、ビビアンはがっくりと項垂れた――